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身寄りなしの認知症に備える終活について

認知症になっても安心・万全の備えを

2015年の日本総研のレポートによれば、2015年の高齢者世帯は5世帯に1世帯となり、数にすると1,201万世帯です。2025年には1,427万世帯、2040年には日本で3割に当たる1,583世帯に増加します。2040年での子供がいない世帯は、高齢者世帯全体の3分の1にあたる516万世帯になると予想しています。高齢者の後ろ姿

保証人がいなければ入院も介護も受けられない?

子供がいない頼れる身寄りのない人は、入院、手術、介護保険施設への入所や賃貸住宅の入居などで、契約できない可能性があります。病院・施設・大家の立場なれば、費用の支払いや、破損があった際の損害賠償の支払いをしてもらえない心配があるからです。通常は、子供がなっていた保証人を、どうしたらよいのでしょう?

契約だけの問題ではなく、判断能力がなくなって認知症になったら、施設さえ探せませんし選べません。認知症になると、お金の管理ができなくなり、買い物や預金の引き出しが不自由になります。特殊詐欺の標的になったり、悪徳セールスに不要なものを買わされたり、役所から送られてくる様々な手続きも理解ができなくなります。

ところで、ご存じですか?
多くの認知症の方は、自分の判断能力の衰えを深刻に考えていません。ゆっくりと症状が進むために、衰えている本人の感覚が麻痺しているからです。元気なころの記憶のままです。足の踏み場もないゴミ屋敷に暮らしていても困ったと思わないし、食事の内容が毎日同じでも苦にしません。時には転倒して怪我や骨折していたとしても、治療の必要性がわからず、そのまま生活しているケースさえあるそうです。ゴミだらけの室内

誰かが認知症であることを察知して、手を差し伸べなければ助けられません。介護サービスで生活支援をしつづけなければなりません。ただ、介護サービスの契約には保証人が必要、身寄りがなく保証人がいない、保証人がないので介護サービスを受けられず、生活は荒れ放題になるという悪循環が始まります。

身寄りなしの方の終活には、認知症への準備を考慮しなければ、語れない時代になりました。

認知症になる前に準備

身寄りない方の認知症は、年を追うごとに社会問題になるでしょう。多くのサービスや行政からの支援策も現れてきています。しかし、現状用意されている支援やサービスの内容や必要性について、それほど周知されていないのは問題です。

我が身の判断能力の低下をチェックする

認知症は、自覚症状がないまま進行します。要介護3の我が母は、「何でも自分でできるのに、何故介護されなくてはならないのか?」と思っている節があります。独居であればなおさら、認知症を意識していないはずです。本人の判断能力について、常にチェックしつづけます。

東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課発行「知って安心認知症」で発行された自分でできる認知症の気づきチェックリストがあります。壁に貼って、時々やってみるのも良いでしょう。
チェックリストは以下の10項目。それぞれ、全くないが【1点】、時々あるが【2点】、頻繁にあるが【3点】、いつもそうだが【4点】で採点します。

  1. 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか?
  2. 5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか?
  3. 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあるといわれますか?
  4. 今日が何月何日かわからない時がありますか?
  5. 言おうとしている言葉が、直ぐに出てこないことがありますか?
  6. 貯金の出し入れや家賃や公共料金の支払いは一人でできますか?
  7. 一人で買い物にいけますか?
  8. バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか?
  9. 自分で掃除機やほうきを使って、掃除ができますか?
  10. 電話番号を調べて電話をかけることができますか?

チェックリストで合計点を算出した結果、20点以上だったら認知機能や社会生活に支障が出ている場合があります。

医療機関や介護サービスとつながりを持つきっかけは、地域包括支援センターで相談すれば教えてもらえます。壁に張ったチェックリストの側に、近所の地域包括支援センターの地図と電話番号のメモも一緒に書いておくとよいでしょう。この時期には、地域包括支援センターの場所を調べるのも困難になっているかもしれません。

地域包括支援センターは、高齢者の困ったのよろず相談を引き受け所です。認知症の医療機関や、必要な介護サービスなどを紹介してもらいます。

不得手のことだけを依頼

今すぐ後見人に頼むほど悪くないけど、日常生活でどうしたらよいのかわからない、軽度認知症(MCI)の時期があります。後見人を依頼するということは、費用もかかるし、日常生活を送る上での自由がかなり制約されてしまいます。後見人は、最後の切り札と思い、むやみに手を出さないでおきます。

MCIの時期には、ゴミの分別、回覧板の遅延などで近所に迷惑をかけることもあります。

地元の社会福祉協議会で、『日常生活自立支援事業』を運営していますので、公共料金や家賃の支払い、預貯金の払い戻しなどの金銭管理など依頼することができます。ゴミ出しの支援などもやっているところもありますので、相談してみます。社会福祉協議会の連絡先は、アドレス帳にメモをしておきます。

認知症になるとまず、ここに書かれているようなことができなくなるのです。

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任意後見契約

いざ、介護サービスの利用を決心すると、契約の説明を施設側からしてもらえます。介護保険は金銭的に助かりますが、その仕組みは複雑です。判断力が低下した高齢者は、介護業者の説明を理解して印鑑の押印や支払いは、精神的に厳しいのです。

安心して介護サービスを受けるためには、信頼できる人の助言や支援が必要です。通常は、その役目を子供が行います。

自信が持てなければ、石橋を叩いて任意後見人に頼るべきでしょう。

任意後見人は本人が信頼している人なら、友人でも親族でも依頼することができます。よく耳にする成年後見人は、本人の認知機能が低下後に、裁判所が選出した人が後見人になります。本人の本意とは違う、気が合わないといったことを我慢しなければなりません。判断能力のあるうちから、任意後見人の選出は大変意味あることです。

ただ、任意後見人は複雑で専門的な事務手続きを行う必要があり、行政書士や司法書士などの士業や、成年後見人の役割を行う法人などと契約を選ぶ人も多いようです。

任意後見人に依頼できることは次のようなことです。

  • 財産の保存と管理
  • 金融機関との取引
  • 定期的な収入の受領、定期的な脂質・費用の支払い
  • 郵便物の受領
  • 介護契約、その他福祉サービスの利用契約
  • 医療契約、入院契約に関すること
見守り契約

実際に任意後見契約がスタートするのは、本人の認知機能が低下してからです。それまでの期間は、認知機能の衰えや生活の乱れの有無を確認するために、面談や電話などで定期的に本人と接触を行ってもらえると安心です。

なにしろ、認知機能の低下を見定める家族がいないのですから、他人に頼むより致し方がありません。

任意後見人契約のスタート時期を見極めるために、『見守り契約』もセットで結ぶのが通例です。

身元引受契約と身元保証契約

我が子であれば十把一絡げ(良いも悪いも区別せずに)で、親の身の回りのことをしてもらえます。【契約】となれば、制限があり全てを任せられません。任意後見人が行ってくれるのは、あくまで財産管理や外部組織との取引、契約に限られます。任意後見契約でできないことは、身元引受契約や身元保証契約で補っていきます。

身元引受契約と身元保証契約も、2字が異なるだけですが役割が違います。

身元引受契約は、賃貸住宅の入居時や医療機関へ入院する際の「緊急連絡先」になること、本人が死亡した時の身柄を引き取ってもらえる契約です。

身元保証人は、入院した際に本人に代わって治療方針を確認したり、入院手続き、病院や介護施設などで器物を破損させたり、他の入居者に怪我を負わせた時の身元保証と、損害賠償保障する役割があります。

身元引受や身元保証を一緒に行ってもらえる民間企業をよく見ますが、こうした企業に依頼する場合は、契約時に数十万円ほどの保証金を支払って、身元引受と身元保証の両方を契約をします。

当サイトの身元保証人についての詳細記事。

尊厳死宣言公正証書の作成

死への考え方は人それぞれで、延命治療を拒否して自然死(老衰)を選びたい人と、病院で管に繋がれながらも1分1秒で生き永らえたい人もいます。

医療現場は治療する場所なので、入院すればあらゆる延命治療を施されるのが原則なのです。何もしなければ、延命治療がデフォルトです。

『いや、そうではない。私は自然死を選ぶ』と考えていれば、尊厳死宣言公正証書の作成を作成しその意思を明確にしておく必要があります。通常、任意後見契約の際に公正証書作成の手続きが含まれているはずです。もし、提示されなかったら聞いてみてください。

遺言書の作成

遺言者は、財産が少なくても作成した方が良いと思います。自分で稼いだお金を誰に渡すかを決めないまま死んでしまっては、嫌な言葉かもしれませんが「死にがい」がありません。

これは個人的な意見ですが、夢を追う「生きがい」があるとすれば、自分が死んだことに意味を持たせる「死にがい」もあります。

『身寄りはなかったけど、自分の意志で誰かに何かを残した』と、満足して旅立ちと考えませんか?

手間と費用が掛かりますが、判断能力がある時に公証役場で「公正証書遺言」を作成しておけば、確実に指定したところにお金を渡すことができます。遺言公正証書

墓じまいと墓選び

子供も兄弟もいない身寄りなしの終活には、先祖代々のお墓をどうするか決めなくてはなりません。そのまま放置し続けると、墓地は無縁仏となり、整理されてしまう可能性もあります。

今あるお墓を撤去し遺骨を他の墓地に移す、或いは永代供養や自然葬にして供養する墓じまいが良い選択肢になります。

さらに自分のお墓の用意もしておく必要があります。お墓を継承する人がいない人向けに埋葬方法がいくつかあります。本人が生きている間に、調べて生前契約をしておきたいものです。

死後事務委任契約

本人の死後の任意後見人は、財産管理の計算、相続人などへの財産引き渡し事務などまで行います。それ以外の死後の手続きは、死後事務委任契約によって行われます。

例えば、病院からの遺体の引き取り、入院費の清算、葬儀社への連絡、納骨、遺品整理、クレジットカードの解約などです。加えて、役所へ死亡届、火葬許可申請書の提出、遺品整理、健康保険証や運転免許証の返納、住民税や固定資産税の納付、公共サービスなどの解約、メールやSNSアカウントの削除も行わなければなりません。こうした手続きを、死後事務委任契約によって任せられます。

もし、任意後見人にこちらもお願いしたい場合は、任意後見契約とは別に『死後事務委任契約』も結ぶことで可能になります。

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