介護が暮らしへの意識を変える
介護と言えばストレス、費用、離職、睡眠不足と、デメリットばかりを思いつきます。「介護に役立つ知識」という言葉はありますが、逆に「介護が役立つ」という話はありません。介護は与えるばかりで、何も得るものかないのでしょうか?
介護をしていて改めて知った、学んだ、良かったと思うことも実はあるのです。取るに足りない小さなことですが、介護で暮らしへの意識が変わりました。
暮らしが楽しくなった
会社員をしていたせいか、主婦でありながら家事が全く駄目駄目だったのですが、親の介護のために否応なく、家事をせざるを得ない状況になりました。
ただでさえ家事が苦手なところに、介護が加わるのです。困ったことの連続で、おばあちゃんの知恵袋的な家事のコツを読みあさり、自分であれこれ工夫をし続けます。
困ったと解決を繰り返していくと、家事のアイディアを増えていき、暮らしが楽しめるようになりました。あら不思議、家事が楽しい!!もっと、素敵に暮らす方法はないものかと、さらに欲張りになります。
洗濯はピーンと干すとあとが楽
例えば、洗濯物を干すとき皴を隅々まで伸ばしておくと、アイロンの手間が省けます。洗濯ものが増えると、シーツや服の皴を伸ばす時間も惜しくなります。
洗剤のブレンドもやってみました。汗のにおいが気になるときは洗濯洗剤と一緒に重曹を、尿などの汚物のにおいは塩素系漂白剤を使えばよいと学びます。
どんなゴミもドーンと来い
母の庭は、母があっちこっちで持ってきたガラクタで大変なことになっていました。
建設現場にあるような、2m以上の鉄の棒が庭中に張り巡らされて、粗大ごみへの申し込みも不可、回収はできないと言われます。申し込み受付担当者に、「それ、家庭で使われていたゴミですか?」と聞かれます。わからないですよ、私だって。
市の清掃局に直談判することを覚えます。加えて、利用したことがなかった産業廃棄物業者に連絡することもありました。
多くの人は親の家の片づけが大変というけれど、普通のお宅ではありえないガラクタに、悩まされることはないでしょう。1階の屋根を軽く超えてしまう、鉄の棒を地面に突き立てながら、自分を哀れだと嘆いてしまいました。
でも、すっかり庭が片付いた時、生ごみ以外のゴミを処分する知識と体力がついていたのです。金属のこぎりを買ってゴミを小さくしたり、太陽光線にポリバケツを当て続けて、プラスチックを劣化させて壊したりする技も身に付けます。
大量のガラクタの中から、使えそうなものをピックアップもできます。時には、修理したりして、「あれ?私ってこんなにマメな人間だったかしら」と感心してしまいました。
歯磨き上手になった
介護する前は、歯磨きなんて誰でもできると考えていました。でも、完璧に行うのは、大人でも難しいのです。
親の入れ歯をブラッシングして、毎日汚れを落とすうちに、歯の凸凹が頭に焼き付きます。入れ歯と言えども、口の中で歯と同じ場所で、同じ働きをします。歯石が溜まりやすい場所や、食べかすがこびりつく場所は本物の歯も同じです。
歯の裏側は、特に汚れがとりにくいですね。歯石が付きやすいのは下の前歯の裏側で、特に念入りなブラッシングをしなければなりません。
自然と自分の歯を磨くときも、入れ歯の映像が頭に浮かび、細部まで丁寧に磨けるようになっていました。つまり、歯磨き上手になっていたのです。
食事を大切にするようになった
全ての病は食事と少なからず関係しています。病気のデパートのような母を介護して、病気と食事の情報を集めまくりました。それまでは、食事は単なる栄養補給、車のガソリンぐらいにしか考えていなかったのですが、食事を大切にするようになります。
バランスの良い食事を心がけ、気が付いたら、1日3食毎に調理をしているではありませんか?まぁ、これは私の今までが、だらしなさ過ぎただけです(笑)。
情けは親の為ならず
親の介護をする年代は、通常は50代頃です。そろそろ自分も高齢者に仲間入りをしようとする時期に、あらためて暮らしを学びなおすのも悪くありません。
洗濯物の干し方なんて大量に洗濯物がなければ、改善しようなんて考えません。ゴミにしても、自分のゴミだったら押し入れやガレージの奥に仕舞い込んでしまうに決まっています。歯磨きのやり方なんて、今さら口にするだけで恥ずかしいです。
親のために行っていたつもりが、自分の暮らしのブラッシュアップになりました。「情けは親の為ならず」。みんな介護に励もう!!
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