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訪問看護師の現状と大変なこと

深刻な人手不足の原因は介護を受ける側にも

病気や障害を持ちながら自宅で暮らしたい人にとっては、訪問介護や訪問看護はありがたい制度です。メリットもあるといわれている訪問看護師ですが、実際には病院勤務の看護師よりも深刻な人手不足です。人手不足の原因に、サービスを受ける側にも少なからずあるようです。

訪問看護師の現状と大変なことについて、まとめてみました。高齢者と手を取り合う

訪問看護を受けるには、主治医に相談して病状や要介護度などが書かれた「訪問看護指示書」を交付してもらう必要があります。要介護認定(要支援1・2、要介護1~5)であれば介護保険で、介護保険対象者でなければ医療保険で適用されます。

訪問看護師のメリット

施設や病院で働く場とは異なり、利用者のお宅へ行ってケアをする訪問介護には、共通項があります。

病院などは交代制で日勤と夜勤を繰り返しますが、訪問介護士は平日の日中勤務が基本です。但しオンコールと言って緊急を要する連絡が利用者から入った場合は、時間を問わず対応しなければなりません。

勤務時間は、1日数軒の利用者宅を訪問し、訪問時間は1時間程度です。病院勤務と比べて、自分の生活リズムが守られやすいので、家庭持ちの方には魅力です。

医師の指示書を基に、体温・脈拍・血圧の測定や入浴・排泄の介助、床ずれ防止の処置、点滴の投与、人工呼吸器などの医療機器を管理します。

利用者は、要介護1~5及び要支援1・2の方と、要介護認定のない利用者で医師が必要と認めれば、若い世代の方もいます。利用者の様々な身体状況に合わせて、幅広い処置の技術や知識が求められます。

さらに、家族や医師、介護関係者などとのコミュニケーションをとりながら、問題解決にあたることもあります。そのため臨床経験の豊富な看護師、少なくとも看護師として臨床経験が3年以上の方、さらにはもっと長年勤めたベテランが多く占めています。

訪問先では看護師1人の判断にゆだねられます。それでも判断が難しい際は、電話やオンラインツールで所属する訪問看護ステーションや、主治医に相談を行いながらということもあるようです。

冒頭に書きましたように訪問看護師の人手不足は深刻で、新卒でも訪問看護の仕事に就けるように、研修に力を入れる自治体も現れています。訪問介護師のメリットの一つに、訪問看護の経験は、再就職時に活用しやすいことがあります。病院での入院日数が医療費削減のために縮まる一方の今日、退院後の患者の生活サポート支援に役立てることができるためです。

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訪問看護の大変なこと

最も大変なことは、利用者から暴力や暴言、ハラスメントの被害に遭うことです。厚生労働省が訪問看護を原則1人と、規則を設けていることが大きなネックで、多くのセクハラ記事にも1人訪問の問題が書かれていました。

2019年2月に厚生労働省は民間のシンクタンクを利用し調査した結果、訪問介護職員の半数が、ハラスメントの被害を受けていました。また、看護師を派遣する訪問介護ステーション事業者団体の「全国訪問看護事業協会」の調査でも半数以上。労働組合「日本看護クラフトユニオン」の調査でも、7割以上が被害を受けた経験があると回答しています。

厚生労働省が定める運営基準は、正当な理由なく事業者がサービス提供を拒むことを禁じています。日本介護クラフトユニオンは被害を受けた場合、サービスの提供を、取りやめが可能な法律の整備を求めています。まず取りやめるための「正当な理由」が、ハラスメントも該当することを運営基準に定義することが先決です。

利用者の中には「何でもやってくれる」と思い込み、職員にサービスを無理強いする人もいます。在宅の中は施設とは違い密接性が高く、自分のテリトリー(なわばり)にいる利用者や家族は上から目線になりやすいのです。しかも、外部の目も届かないためにハラスメントが起きやすくなります。

訪問看護を含めた介護のサービスの範囲を、利用者に正しく伝えることが必要です。それ以外の要求に至らないように、誘導する技術も必要です。最も望まれるのは、複数人で看護にあたることを可能にする、予算措置の検討も行うべきです。

自衛策

セクハラをする患者宅は、2人で訪問という対策を行う事業所も複数ありますが、利用者の同意が得られなければ2人目の人件費は事業所の『自腹』となります。人的、経済的に余裕のある事業所でなければできません。実際、訪問看護ステーションの多くは、零細事業所がほとんどで、事業所単位で対策を行うことは困難です。

事業者側の対策の8割を占めているのは、訪問中止です。しかし、利用者側が「やっていない」とか「言っていない」と言い張れば、訪問中止もままならず、結局我慢して訪問を続けるケースもあるそうです。

看護師側も、携帯電話のボタン一つで事務所につながる状態にしておく、必ず出口を確認しておくなどを講じている方もいますが十分とは言えません。

国は訪問看護を複数人で行えるように制度を整えるとか、IT機材やカメラの活用を可能とすることなど対策を検討するべきです。

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