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家族信託は成年後見人制度のデメリットを補う

後見人制度よりガードは低くリスクも高くなる

成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人向けに、後見人の司法書士らが財産管理を行う制度です。悪質な訪問販売で高額なものを購入しても、この制度を利用すれば契約を取り消せます。

2000年に始まり利用者は増えたものの、16年末は約20万人に留まりました。15年度の時点での認知症の方は、約500万人で利用率は1/10にも届きません。資産について考えている人

みずほ情報総研の「認知症の人に対する家族などによる預貯金・財産の管理支援に関する調査」によれば、成年後見制度を知っていても、利用するつもりがない人が55.4%でした。利用を検討している人は22.8%、利用している人は6.4%でした。同総研の担当者は、「家庭裁判所への申し立てなど複雑な申請手続きが利用を妨げる背景にある。家族など支援者の視点をこれまで以上に取り入れる必要がある」と話しています。

家族が行う財産管理のほとんどが、「1回あたり50万円未満の預貯金の引き出し」が76.9%で、次は請求書などの支払いが36.6%と続きます。

財産管理支援の現状

成年後見人制度のデメリットは、【後見人になると定期的に家庭裁判所への財産状況の報告の義務】、【後見人への報酬が負担(一般に月額1~2万円程度)】、【お金は本人のメリットだけに限られるので同居の家族の自由度が低くなる】、【後見人制度は途中でやめられず本人亡くなるまで続く】などです。

よく言われている話ですが、夫婦のうち夫が後見人制度を利用すると、後見人は夫のためにだけ厳格にお金を使います。同じ財布で生活をしている妻は、経済的に境地に立たされてしまうこともあります。

このようなデメリットを補うために、昨今高齢者の財産管理として注目を浴びているのは、家族信託です。家族信託は、【公証役場で契約を行うもの】と、【金融機関で行われているサービス】の両方を指しています。

公証役場で契約は、現金の他、不動産、上場株も入り、上限がありません。金融機関の信託は現金のみで、上限が決められています。

家族信託は後見人制度とは異なり、本人が元気な時の希望が信託契約書の記載されていきます。この希望に反しなければ、財産管理を変わって行う家族は、比較的自由度の高い財産管理ができます。成年後見制度ではできない不動産の売買や相続税対策が、本人の健康状態(判断能力の有無)を問わず、本人の命がある限り継続できます。

公証役場で契約を行う家族信託

家族信託は、財産を持つ本人が自分の老後に必要な財産の管理をどのように使うべきかを決めていて、管理を任せられる信頼できる家族がいることが前提です。この信頼できる家族というのが、中々難儀です!

契約前に、自分が所有している財産を全て調べます。預金額、証券、保険、不動産名義などを確認します。”財産をどう使い、誰に残したいのか、その考えに反対する人はいないのか”といった、家族の心情なども考慮するべきです。

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契約時期は本人が認知症になる前、少なくとも契約内容が理解できる時期でなければなりません。認知症になってからの財産管理支援を依頼するなら、成年後見制度の中の法定後見になってしまいます。なかには、認知症と診断されていながら、専門家の前で意思確認が可能だったために契約できたケースもあります。

公証役場では契約内容をビデオで撮影するところもあり、後々に本人の判断能力が問題になった場合に備えています。

現時点元気な本人が認知症になった場合を想定して、契約の取り決めを行っていきます。この行為は高いレベルの判断能力が必要です。相談者として弁護士や司法書士などの専門家に、契約を手続きを依頼することになります。

頼んだ相手が家族信託に詳しくないと、契約内容によっては贈与税が課せられる、不動産が売却できないなどトラブルのリスクが高くなります。

相談者を選ぶ場合は、家族信託の実績がどれくらいあるのかをまず尋ねます。不動産会社や税理士らが開くセミナーが増えました。こうしたセミナーに参加して、信頼できそうな専門家を探す方法もあります。

契約内容がまとまれば信託契約を結び、公正証書の作成をします。おおよそ依頼から契約完了まで、1~2カ月はかかります。費用は信託する財産の0.5%~1%程度。3000万円なら15万円~30万円くらいです。他に、登記費用、信託目録、登録免許税、公益役場の手数料などが約42万円かかります。(※週刊文集11月21日号参照)

金融機関が発売する家族信託

金融機関で発売している信託は、主に3つに分類できます。(※日本経済新聞2017年7月1日参照)

法定後見の被後見人が対象

「後見制度支援信託」は、成年後見制度の利用者が対象です。本人(被後見人)の預貯金が1,000万円以上(東京家庭裁判所管内は500万円以上)あり、当面、具体的な使途がない金銭が多いと専門家が判断した場合、家裁からこの信託を使うように求められます。

財産のうち、日常的な支払いに必要な200万円程度は、預金口座において後見人が管理し、それ以外まとまった金銭を管理します。

信託財産の出金は毎月一定金額や、有料老人ホームの入居一時金などに限定されます。ある程度まとまった金額を出金するときは、家裁の指示書がその都度必要になります。出金に1週間前後かかることもあるものの、財産は確実に本人のために使われます。

3親等以内の親族が代理人

成年後見制度は、本人(被後見人)のためだけに金銭を使います。信託の中には、他の人が財産の保全のために使える信託もあります。

三井住友信託の「セキュリティ型信託」は、あらかじめ本人の3親等以内の成年親族が代理人となり、お金の引き出しには、代理人の同意がないと引き出せません。
三菱UFJ信託の「みらいのまもり」は、代理人の同意に加え使途を10万円以下の医療費、有料老人ホームへの入居一時金に限定しています。

死亡後も継続できる財産管理サービス

「遺言代用信託」は、本人の死亡後、配偶者や子供などの相続人が信託財産から毎月一定額を受け取れるようにしたり、必要な葬儀費用を引き出したりできます。遺産分割効果があるので、相続対策にも使えます。

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