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介護職の退職理由は低賃金、重労働だけではない

介護現場ならではの深い事情って何?

低賃金、重労働といわれている介護現場の退職理由のトップは、「職場の人間関係」で22.7%です。次いで「結婚や出産など」「他にいい仕事があった」などが続き、「収入が少ない」は16.4%で5番目にあげられています。真っ先に、低賃金や重労働の理由が来ていません。

勤続年数毎の離職率はどうでしょう。介護労働安定センターが2017年度「介護労働実態調査」で、2016年10月1日から2017年9月30日の間に調査していました。1年未満の離職が38.8%、1年以上3年未満が26.4%です。つまり、3年以内で65.2%の介護者が離職しています。介護施設

2025年には65歳の高齢者が3人に1人になることを見越して、できるだけ介護の質を上げたい政府の思惑とは裏腹に、介護士の定着率は依然と低いままです。

退職理由にあげられている項目は、取り立てて普通ですが、一般とはニアンスが異なり、介護現場ならではの事情が隠されていることに気が付きました。人はいずれは年をとり、大なり小なり人の助けを借りて生きていかなければなりません。最後の砦の介護現場の悩みを、多くの人が知るべきです。

3年以内の65.2%が退職してしまうのは

介護現場は人手が足りないために、目の前の事象に追われて研修が十分にできません。多くの介護現場は、先輩の仕事を見よう見まねで覚えていくようですが、利用者毎に対応が異なり、すぐに応用が利かないこともあります。

介助や服薬管理など、初歩的なことを教える実地研修もされていない職場も多いと聞きました。段階を踏んで介護技術を学べないために、自己流でおこなわざる得ないで、上手くいかずやる気が喪失していきます。

中小規模の施設が多い中、狭い人間関係の中で悩みを語り合うつながりも希薄です。丁寧な研修を行われないまま、新人介護士は徐々に孤立してしまいます。

キャリアを積んだ介護士が、新人を育成することで退職が防げたかもしれません。慢性的な人手不足を、解消してキャリアを積んだ介護士の手を開けなければなりません。

退職理由の言葉の裏に隠されているもの

退職理由の「職場の人間関係」、「結婚や出産など」、「他にいい仕事があった」、「収入が少ない」はいずれも、どの職場でも聞かれることです。でも、新聞や雑誌などを読んでみると、介護職ならではの理由を見つけました。

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職場の人間関係

人間関係というと同じ職場で働く者同士と考えるものです。介護士には利用者も加わります。確かに顧客や生徒相手の職場もあり、介護士だけではないと反論もありますが、お店や学校とは違い密接度が違ってきます。入所系の施設なら勤務のある日は必ず同じ利用者と顔を合わせ、通所系の施設であっても利用者の顔触れは、年度単位で変わることがありません。

介護職を選ぶ理由として、スマホ中心の人間関係から顔を合わせて触れ合いが持てるとか、介護したお年寄りの笑顔を見たいためという方もいます。若い方は優しい祖父母のイメージをお年寄りに持っていますが、実際に介護してみるとそうでないことに気づかされます。

介護拒否、理不尽な要求、上から目線の言動、傷つくような物言いをされるなどことも多く、働き始めてやっと現実を知るのです。ある特養では、利用者の高齢者にトイレ誘導したところ、拒否され顔をたたかれた20歳の女性介護士がいました。介護はきれいごとだけではないと知り、幻滅して退職の道を選ぶようです。

さらに、介護といえども利益を追求する1企業です。理想に燃えて介護職に就いたものの、利益中心の現場のやり方に納得がいかずに退職を選ぶ方もいるようです。どの職場にもありがちなことですが、信念を持った方がより多いと想像します。

結婚や出産

退職理由にある結婚は、世間でいる寿(ことぶき)退社とは意味合いが違っていました。正社員でありながら何年勤めても、給料がわずかしか上がりません。2018年3月末に厚生労働省が公表した「賃金構造基本統計調査」で、その事実が公になりました。

生涯の職として介護士を選びますが、結婚や出産を迎えると現実の給与体系では、やっていけないことが分かります。男性も女性もかかるお金の分だけ、収入増を求めて転職をしてしまいます。

ちなみに、自動車組立工や販売店員、保育士、ケアマネージャなども、給与の横ばい傾向は同じです。販売店員(男性)については、20代前半から40代のピークまで、約10万円しかあがらないそうです。

2017年度に厚生労働省が発表した全体の平均月収(賞与込み)は36万6千円、一方介護職は10万円近く下がる27万4千円、准看護師は33万8千円、ケアマネージャは31万5千円です。勤続年数は全体では10.4年で、介護職は6.4年というデータが出ています。多くの介護職は、10年持たないのが分かります。

政府は他業種との賃金格差を縮めるために、数回にわたり介護人材の賃金を引き上げています。2019年10月には、技能のあるリーダー級の処遇改善として、勤続10年以上の介護福祉士の月給を8万円引き上げました。また、介護福祉士を目指す人の修学資金貸付や、離職者の再就職支援なども講じてきていますが、打開策になっていないと新聞にはありました。

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