自分にも犬にも優しい飼い方
今、65歳以上の高齢者のうち、6人に1人が単身で暮らしています。仕事をリタイヤし趣味の活動でさえ年々おっくうになると、日常生活のハリが失われます。生きがいを感じるような刺激が、少なくなるせいです。共に暮らす人との意味のない会話が、恋しくなるのもこの時期でしょうか?『犬でも飼ってみようかな?』と、考えるのは自然です。近所でも高齢者の犬の散歩姿をよく見ます。
高齢者が犬を飼うことのメリットは、広く周知されていますが、最も多くの高齢者に響いたのは、寿命が伸びるという研究報告です。代表的なもので、動物と触れ合うことで血圧が安定する説です。
毎日決まった時間に散歩や食事の世話をしなければならないことから、おのずと規則正しくなり生活のリズムが整います。1日1回は散歩の際に外出すれば、他の飼い主とのコミュニケーションも生まれやすくなります。世話をしているという意識が、自尊心をくすぐるために活動的にもなれるのです。
高齢者施設でもアニマルセラピーを取り入れているところもあり、施設で犬を飼っていたりレンタルしたりしています。犬をなでるために自分から腕を動かし、ちょっとしたリハビリになります。思わず笑顔もでます。動物との触れ合いは、幸せな気持ちを感じるホルモン・オキシトシンが分泌され、情緒の安定にもつながるそうです。
会話が難しかった認知症の方が、アニマルセラピーを体験することで表情が和らいだ実例もあります。
良いこと尽くしの犬ですが、高齢者向けの飼いやすい犬と、気がかりなこともいくつかあります。
高齢者が飼う犬の種類
高齢者が飼う犬について、東大教授、西村亮平さんは「手間のかかる子犬に比べて、成犬は落ち着いているので飼いやすい面がある。保護権の成犬も候補になる。」と話しています。
犬の大きさも大切です。大型犬は力が強く、散歩中に引っ張られて怪我をする心配があります。長時間の散歩や駆け足が必要な犬の場合は、運動不足になるとストレスがたまり無駄吠えをしやすくなります。飼いやすい犬の種類は、小型犬のトイプードル、シーズー、ヨークシャーテリア、マルチーズ、それらのミックスなどです。
犬が命を終えるまで飼い続けるためには
2012年の動物愛護法改正で、飼い主には「動物がその命を終えるまで適切に」飼う努力義務が課せられました。
もし、犬より先に飼い主が先に死んでしまった際、一人暮らしで引き取り手がなかったり、家族や親族がいても引き取りを拒否すれば、保健所で処分されます。
2017年度の環境庁の統計では、自治体が引き取った犬は3万8511匹で、うち処分されたのは8362匹です。10年前と比較すれば、10分の1以下ですが、それでも全体の2割の犬の命が失われています。
こうした状況に対応して、飼育しきれなくなった犬や猫を救うための社会的な仕組みも整備されてきました。有料で最後まで飼育する「老犬・老猫ホーム」があります。信託銀行などを活用して、ペットに遺産を残し、その管理を専門家に任せるサービスなどが充実してきました。
信託サービスなどを提供するNPO法人「ペットライフネット」の吉本由美子理事長は、「犬猫の寿命が延びてきて、高齢者が飼い続けることが難しくなってきている。高齢者による飼育放棄を防ぐには、何らかの形で誰かが飼いつなぐしかない」と話しているそうです。
一緒に生活を共にしてきた犬へ、優しい仕組みを検討してみてはどうでしょう。
標準の手続きも忘れずに
今年5月5日の読売新聞に、狂犬病の予防接種率が下がっていると書かれていました。何を今更とも思えますが、この時期に新聞に掲載されるということは、何かリスクがあるに違いありません。標準の手続きも忘れずに行いたいものです。
その昔は野良犬も多く、屋外で犬を飼っていたお宅が多かったのですが、最近は室内犬で家族の一員のように扱われているせいか、狂犬病のイメージが薄れてしまいました。これが、予防接種率の低下の原因のようです。
狂犬病は感染した犬にかまれたり、傷口をなめられた人が発病すると、幻覚や興奮状態を経て必ず死亡します。日本では1957年以降は発生していませんが、海外では、今でも起きています。
予防接種は、飼い始めて30日以内に1回すれば良いだけです。
ペットの販売店では、改正動物愛護法に従って、マイクロチップを犬の首の後ろに装着させます。販売店から犬を購入したら、オンラインで所有者の申請を行います。登録機関は、オンラインで市区町村に登録情報を通知します。マイクロチップの情報は、市区町村が狂犬病予防法に基づいて、摂取の案内などを送付してくれます。
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