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2021年度介護保険法改正案は半分以上先送りとなった

負担増は70歳以上の就業を軌道にのせてからの話らしい

介護保険法改正は、1割負担から所得に応じで2割、3割に変わったのは、前回2018年のことです。いよいよ厚生労働省も本腰を入れてきたと、覚悟をした次の2021年度の介護保険法改正案を見てみると、意外に弱腰になっていました。介護保険証と電卓

今回の弱腰に見えた背景には、70歳以上の就業支援を法律で制度化し、診療報酬を75歳以上の所得のある人に2割負担をしてもらってからという意向があるようです。さらに、医療も介護も両方一度に改正すれば痛みが大きいということで、介護は後回しになりました。後期高齢者医療の2割負担が決まれば、介護保険という流れになるようです。

ちなみに社会保険制度の改正は、医療は2年ごと、介護は3年ごとです。医療は前回2018年介護は前回2019年ですので、医療の診療報酬改定は今年2020年で介護は2021年です。2021年に先送りされた案件は2024年に加わる可能性があり、懐が厳しくなるのは時間の問題なのです。

介護保険法改正案について

介護保険制度の見直し案は、次の6点で、2021年度から導入が決まったのは最初の2つのみです。

  • 特養などを利用する低所得者の自己負担増【導入】
  • 高所得世帯の自己負担上限の引き上げ【導入】
  • 自己負担2割の対象者拡大【先送り】
  • ケアプランの有料化【先送り】
  • 要介護1,2の生活援助サービスの市区町村移行【先送り】
  • 介護老人保健施設や介護医療院の相部屋利用者の部屋代負担【先送り】

各々の詳細を次章に書きます。

特養などを利用する低所得者の自己負担増【導入】

介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)は、介護保険が使えて安価であるといわれていますが、食費や部屋代は介護保険の対象ではなく、原則自己負担です。

但し、住民税非課税世帯(年収155万円以下)のうち、単身世帯で預貯金や有価証券などの資産が、1千万円以下の場合は補助が受けられます。

今回の改正では、資産が1千万円以下の条件は、500万円以下に引き下げられました。

補助額は収入に応じて決まり、自己負担額が違ってきます。その中で年金収入等が80万円超の方は、食費と部屋代を合わせた自己負担は月約3万1千円でした。今回の改正で80万超の区分を、次の2つに分けて負担額が設定されました。

年金収入等が80万円超120万円以下

食費と部屋代を合わせた自己負担は、月約3万1千円で変わりません。

年金収入等が120万円超

食費に2万2千円を上乗せして、食費と部屋代を5万3千円に変わります。

高所得世帯の自己負担上限の引き上げ【導入】

介護サービスは利用者に所得に応じて、1割から3割の自己負担となっています。自己負担額が増えると、医療費と同じように「高額介護サービス費」の仕組みが適用されます。1カ月の介護負担額が、所得に応じて決められた金額を超えた分だけ返却されます。

この所得に応じて決められた金額が、高所得世帯の区分で見直されました。現在、月4万440円を超えると返却されていた区分が、3つに分割されます。

年収約770万円未満の世帯

限度額が4万4千円。

年収約770万円以上で約1160万円未満の世帯

限度額が9万3千円。

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年収約1160万円以上の世帯

限度額が14万100円。

自己負担2割の対象者拡大【先送り】

多くの介護保険利用者をドキリとさせた、所得に応じて2割、3割負担の改正でしたが、実際は2~3割の負担の方は少なく、利用者の90%が1割負担となっています。

2割負担の条件は、年金収入のみの場合で280万円以上382万円以下。3割負担の条件は、年金収入のみで383万円以上。年金生活に入った高齢者では当てはまる人が少ないのですね、きっと。

こんなことから財務省や経済界では、1割から原則2割という声が強くなります。しかし強行すると、介護サービスを利用しない人が増え、介護離職が増える懸念があるなどの反発もありました。結果的には冒頭に書いた通り、後期高齢者医療で2割負担が導入されれば、いずれ2割の流れになっていくと思われます。

ケアプランの有料化【先送り】

自宅介護者を支援するケアマネージャが作成する、ケアプランを有料化することで、国の介護費の抑制できます。

ケアマネージャは被介護者の自宅を月1で訪問して、介護環境の助言をしたり、高齢者の身体状態、収入、家庭環境などに見合った介護プランを提案してくれます。利用者が介護保険で福祉用具を購入したり、レンタルをすれば、市町村への申請手続きを利用者に代わり行います。こうした作業で発生する費用は、利用者は負担しておらず、国が肩代わりしています。

ケアプランの作成だけで、高額な場合なら一人当たり月約1万4千円ほどかかるそうです。利用者が1割負担で支払うとすれば、1400円の費用が発生します。現在は利用者は無料です。

今回先送りされた理由としては、低所得者が介護サービスを利用しずらくなることと、利用者が費用の支払いをたてに、必要性のないサービスの利用を無理やり要求するのではという懸念があるからだそうです。

要介護1,2の生活援助サービスの市区町村移行【先送り】

要介護1,2の生活援助サービスの市区町村移行は、財務省の強い要望でした。しかし、約4300人の反対署名が政府に届けられました。

生活援助サービスとは、利用者や家族が家事等を行うことが困難な場合、掃除、洗濯、調理、買い物、薬の受け取りなどを訪問介護スタッフが行うことをいいます。利用者に直接働きかける身体介護とは異なることから、介護保険を適用するには意味合いが違うという意見があります。

重度者の生活援助サービスは、生きていくための必須サービスと言えるけど、経度の場合は単に便利だからということはないのか?軽度の人に必要以上に生活援助を行うことは、自立支援にならないのではといった指摘もあります。

論争は今後も続いていくものと考えられます。

介護老人保健施設や介護医療院の多床室の部屋代負担【先送り】

介護老人保健施設や介護医療院の場合は、生活の場ではありながら医療を提供するという他の機能も持っています。そのような理由から、多床室を利用時の居住費は、光熱水費のみの費用となっています。但し、個室やユニット型個室は、居住環境が大きく違うことから、居住費に光熱費と室料が加算されています。

一方、介護老人福祉施設(特別養護老人ホームのこと、通称特養)は、死亡退所が多く事実上の生活の場として選択されていることから、居住費に光熱水費と室料が加算されているのです。

今回の改正で、介護老人保健施設や介護医療院の多床室の居住費に、室料を加えるべしという案がありました。3年後この案が通れば、利用者の負担増となることは言うまでもありません。

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