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高齢者のポリファーマシーは転倒や記憶障害のリスクが大

副作用と薬剤費の両面から対策が迫られる

5種類か6種類以上(文献によって異なる)薬を飲むことを、多剤併用とかポリファーマシーというのだそうです。薬を5種類以上飲んでいるなら、医師と相談して減らす話は以前からありました。しかし、具体的な根拠がなかったので、ポリファーマシーの副作用の深刻に考えていない方も多いのです。沢山の薬

それに高齢者の場合、体調がコロコロ変わりたとえ調子が良くなくても、薬のせいと一概には言えません。その時の体調が悪かったからとか、加齢で症状が進んだと判断するからです。

ポリファーマシーの副作用が徐々に明らかに

米国医師会が発行する世界五大医学誌のひとつJAMAに、薬の組み合わせで大腿骨頸部を骨折すると掲載された論文があります。大腿骨頸部とは、足の付け根にある骨盤と大腿骨をつなぐ骨です。人間の体重が最も重くのしかかる、歩くための要となっています。

骨折すれば治るのに時間がかかる高齢者の場合、長期間ベッドで過ごすのでフレイルに陥ったり、寝たきりの可能性も高まります。

先の論文で転倒のリスクのある疑わしい薬として、やり玉に挙がったのは21種類の薬。その中で、高齢者が日常的に服用していてよく効くと評判の薬、6種類は次の通りです。

  • 血圧を下げる「利尿薬」
  • 胃薬のPPI(プロトンポンプ阻害薬)
  • 狭心症や心筋梗塞の予防に使われる硝酸薬(ニトロールなど)
  • 睡眠薬
  • 抗不安薬
  • 抗うつ薬

アメリカのダートマス大学医学部のレベッカ・エメニ博士は、このリストの内、次のような組み合わせで薬を飲むと、疑わしい薬を飲んでいない人に比べて、骨折のリスクが4倍以上になるといわれています。

  • 睡眠薬と抗うつ薬
  • ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬

新潟大学名誉教授の岡田正彦氏もこの件に関して、疑わしい薬を飲む場合は1種類だけに留めるべしといわれています。

海外では、『5種類以上の薬を飲めば、確実にフレイルを加速させる』ことは常識です。ドイツでの調査によれば、薬を0~4種類飲んでいる人たちに比べて、5~9種類飲んでいる人は1.9倍、10種類以上飲んている人は3.1倍ものフレイルになる可能性が高まるデータもあります。

副作用は高齢になればなるほど高くなる

薬の数が増えると、薬の成分を体内で分解する肝臓も多く働かせなければなりません。高齢者の肝臓に負担がのしかかります。高齢者の場合、薬の効果が強く出過ぎて、低血圧や低血糖を招き意識があいまいになったり、ふらついたりして転倒のリスクが高まるのです。

薬の消化能力も衰えているので薬が体内に長時間残り、次に飲む薬との薬効が加わって薬の効きすぎをさらに招いていきます。

ポリファーマシーを防ぐ対策

厚労省は4月17日、「高齢者医薬品適正使用検討会」を開き、高齢者が複数の薬を飲むことによる副作用の実態を詳細に調べはじめました。高齢者に及ぼす副作用が大きな問題ですが、医療費が無尽蔵に膨れ上がることを食い止めるためでもあります。日本の薬剤費は、2016年には10兆円を超えています。

話は少しそれますが、ポリファーマシーを防ぐ対策の他、できる限りジェネリック医薬品(後発医薬品)を利用するべきです。先発医薬品に比べて安いので、個人の努力で国が支払う薬剤費負担を減らせます。協力しましょう!!

疑わしい薬の組み合わせは2種類までは、研究が進められていて、雑誌などで周知されてきています。薬剤師やかかりつけ医のチェックもされていることとでしょう。ところが、3種類以上の組み合わせは研究が少ないし、4種類以上となれば皆無です。

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薬の数を減らすことが、1番の最善策です。

高齢者の体調の変化に気づく

高齢者の体調に異変が起きても、気候や食事、活動状況などによる症状なのか、薬の副作用なのかの判断はしにくくなります。まして自身の体調の変化に気づいたり、訴えられない認知症の場合はなおさらです。

次のような症状があった場合は、薬の相互作用を疑ってみます。

  1. ふらついて転倒することがある
  2. イライラすることが増えた
  3. 物忘れが突然多くなった
  4. 脱力感が抜けない

睡眠薬の飲用で、副作用が認知症のような症状を出すこともあります。昼間ぼんやりしていたり、変なことを突然言ったりするのです。薬の副作用を見分けることができなければ、認知症の薬がさらに増やされてポリファーマシーは進むばかりになってしまいます。

体調の変化のチェックは、介護者も協力しましょう。

ビアーズ基準の広がり

アメリカでも同様な現象が起き、Choosing Wisely Campaign(賢明な選択キャンペーン)という運動がありました。1991年にビアーズ基準(Beers Criteria)という、不適切な医薬品を認識するための一覧表が公開されます。

ビアーズ基準の例として
不眠症に対して、ベンゾジアゼピン系(1)の睡眠薬は避けるべき。
慢性の痛みに対して、NSAIDs(2)と呼ばれる痛み止めを漫然と使うのは避けるべき。

アメリカの高齢者を対象とした病院では、ビアーズ基準を使うためのチェックリストを用いて、薬を数多く飲んでいる高齢者の診察の際に活用しているということです。

2008年に日本版ビアーズ基準が、ビアーズと国立保健医療科学院の研究者らによって公開されています。この日本版ビアーズ基準の解説書が、2014年に出版されました。

2005年には、日本老年医学会でビアーズ基準に対応した「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」を公開しました。

いずれのガイドラインであっても日本も、不適切な薬剤のチェックリスト形式にして一般の診察で活用してもらいたいものです。

降圧剤の調整を伺う

血圧のガイドラインが改訂され、高血圧は悪の中枢のようにいわれています。

しかし、高齢になると低血圧のリスクも加わり、降圧剤を飲み続けることを良しとしない風潮になってきています。高血圧が引き起こすとされている脳梗塞より、低血圧で頭に血が回らないで起こす脳梗塞の方が増えているからです。

薬が多すぎると感じたら、降圧剤の調整を医師におそるおそる伺ってみる方法もあるそうですよ。

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