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欧米人に寝たきり老人がいないのは、何故か?私的考察・・・

人間らしい生活とは何なのでしょうか?

日本は世界一に平均寿命が高いですが、寝たきり老人も多くなります。読売新聞の医療サイトに掲載された『欧米にはなぜ、寝たきり老人がいないのか』に、衝撃を受けました。その理由に欧米人は、『延命治療をしないこと』と、『寝たきりにさせない介護体制』にあります。草の上に座る高齢者

スウェーデンにも寝たきり老人の時代があった

実は、2011年の市民講座で、スウェーデンのダスタフ・ストランデルさんより話を伺うと、かつてのスウェーデンは、寝たきりゼロという訳でもなかったそうです。寝たりきりの老人が、入院する専門の病院がありました。

ベットが野戦病院のように並べられ、決められた時間におむつ交換を行います。医療的な処置を嫌がる老人には、拘束バンドでベットに縛られていたそうです。

次第に、高齢者を預かる場所が、病院から介護施設に移ります。国民の死生観が変わり、人間らしい生活を送るために、改善が繰り返されて今に至りました。

個に対する意識が日本人とは根本的に違う

欧米人に寝たきり老人がいない理由の一つに、延命処置を行わないからと言われています。自分の口で食事ができなくなった際、鼻から胃にチューブを通して水や栄養を送り込み、生命を引き延ばすのではなく、自然に死を迎えているからだそうです。

これは、欧米人の個を大切にする、自立心の強さからきています。乳幼児の頃から個室を与えられ、一人の人間としてプライベートを大切にします。それに対して、日本人は親子で川の字になって、一緒に寝るご家庭が多いはずです。

こういう背景が、老いて体が衰弱しても、寝たきりにならない強い意志を持って生活をさせます。バリアフリーの床、転倒の危険性が高い浴槽にリフォーム、例え歩けなくなっても車いすが使えるように、ベットで生活をしています。欧米人の生活習慣には、体が不自由になっても生活しやすいように、考えられていたのですね。

つまり人の手を借りてまで生き続けるのは、人間らしくないというのでしょう。スウェーデンは延命処置は行わないけれど、口から食事ができなくなった場合は、リハビリ(嚥下訓練)には十分に行います。自立して生活するための支援を惜しまないことが、福祉の理想的な国と言われる理由です。

多くのサイトでは、スウェーデンが延命処置を拒むことばかりを記載していますが、自立して生活するための社会的支援に関しては、さほどクローズアップされていません。延命処置の有無を議論する前に、自立して生活し続けるための社会的支援の方が先です。

何故寝たきりになるのか?

延命処置を行うから、寝たきりになるのではありません。寝たきりになるほど、体が衰弱するから延命処置を行わざるを得なくなるのです。延命処置は、寝たきりを長引かせる原因でしかないのです。

欧米諸国なかで、特にスウェーデンが注目されるのは、予防の手厚さにあります。一説には、同じ寝たきりがいないといわれているアメリカの場合、男性の死因のトップが心臓血管疾患です。肉の摂取や過食で肥満になることが原因で、寝たきりになる前に亡くなってしまうからではと考えている方もおります。アメリカも、重度の認知症患者に対する胃ろうには否定的ではありますが、それだけが理由ではない気がします。

日本の寝たきりの原因

平成22年に厚生労働省が発表した寝たきりに原因は、以下の通りです。

  • 脳卒中 21%
  • 認知症 15%
  • 高齢による衰弱 13%
  • 関節疾患 11%
  • 骨折・転倒 10%
  • 心疾患 6%
脳卒中

脳卒中で倒れた後、回復期のリハビリを利用する高齢者が増えたそうです。意識さえ戻れば、早期にリハビリを繰り返して、麻痺などの障害を解消させる可能性があるためです。脳卒中になる危険因子は、テレビからの情報として周知されました。情報に基づいて、生活習慣を見直す中高年も増えてきています。

認知症

MCI(軽度認知症)を早期に発見し、生活習慣の見直しやコグニサイズを行えば、認知症の発症を遅らせることができます。意に反して認知症になっても、ディサービスやディケアの利用で、安全に認知症の進行を緩やかにさせることが可能です。

高齢による衰弱

心身ともに機能が低下する高齢による衰弱は、自然の摂理であるとはいえ、医療や介護の両面から支えていかなくてはなりません。高齢者の衰弱とは、臓器の機能低下、低栄養、運動機能の低下、生きる意欲の低下などが、当てはまるでしょうか?

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自立した生活と老化は相反する問題であり、『人間らしい生き方とは何か』といった問いに自問自答せざるを得ません。スウェーデンのように、延命処置を行わないといった選択肢に迫られるかもしれません。

関節疾患

運動機能の低下、関節などの痛みにより、歩くことができなくなり、転倒などによって寝たきりになる高齢者は多いですね。フローリングにソファーで生活をすることが当たり前になり、関節疾患の方にやさしい時代になってきています。畳の生活は、関節を痛めている方には辛いでしょう。

関節疾患の予防は、筋力をつけて、筋力で関節を支えさせます。関節に過度な負担をかけないためには、筋力強化しかありません。重症になるにつれ、薬やヒアルロン酸注射、手術など外科的な処置を施されます。

今まで若者向けであったフットネスクラブが、高齢者向けの体操教室に移行してきています。町内会などのコミュニティ活動の中でも、体操教室を開催しているところがあるようです。

体操教室では、高齢者のわずかな力でも、筋肉が強化できる方法を指導しています。また、トレーニングマシーンを使ったパワーリハビリなども、時流となっています。こうした社会的な寝たきり防止の支援の輪は、ゆっくりですが進んでいるようです。

骨折・転倒

関節疾患の方も脳卒中後の方も、認知症の方も、各々の疾病からくる理由で、転倒しやすくなっています。家屋のバリアフリー、段差をなくす、滑りやすい浴槽の改築、歩行を助ける杖や歩行器などが必要です。

転倒の危険性がある高齢者に対しては、買い物、掃除、料理、洗濯などの身の回りの支援を、要介護の如何を問わずに行わなければなりません。日本は軽度介護者においては、こうした支援を打ち切りました。在宅介護を推進している、寝たきり防止を目標としているなら、逆行しているといわざるを得ません。

寝たきりを防ぐという意味でも、こうした骨折や転倒防止のための、人的、道具への支援は社会的に手厚くするべきです。

私が考えるのは、急に増えた核家族化のせい

日本は、スウェーデンとは文化が根本的に違います。日本は昔ながらの家制度の元で、結婚をすれば親と同居するのが普通という慣習がありました。ところが、戦後、高度成長時代を経験し、女性の社会進出が当たり前になりつつあり、同居率が下がりました。

同居を行うことで、転倒を未然に防ぐ、見守る目がありました。買い物など外出しなければならない用事も、嫁や孫が代わりに行ってくれていました。

脳卒中で倒れたとしても、同居していれば、速く病院へ連絡することができます。認知症にしても、家族の会話や行動が刺激になり、廃用になるのを遅らせることができていたはずです。

同居する慣習から、急に一人暮らしや高齢者夫婦の二人暮らしの時代になります。高齢者には、自立した暮らしへの覚悟が整っていないし、子供も欧米のように頻繁に親を訪問しません。長い慣習の変化は、色々なところに弊害がきます。

対応に困った家族は、施設や病院を頼らざるを得なくなります。

危険ゼロの生活が筋力を衰えさせる

病院や施設では、責任を逃れるために危険を回避し、延命治療を施します。私は何度か、そんなに大げさにケアをしなくてもと、感じたことがあります。

危険回避のための手厚いケアが、行動範囲を狭め、刺激を失わせます。筋力を低下させ、思考活動を停止させ、廃用認知症のリスクが生じます。徘徊を恐れ、転倒による骨折を恐れてベッドに、縛り付ける生活を強いられる方もいるようです。

スウェーデンでは危険より人間らしい生活を

スウェーデンの施設では、高齢者の散歩に基本的には職員が付き添うとしているものの、一人で散歩したいと要望があればかなえます。この際、家族の同意を得て、GPS付きの携帯を持たせるそうです。この時、高齢者に事故や怪我があったとしても、自己責任となり施設に責任が問われることはありません。

また、施設内でアルコールを飲むことも、健康上に支障がなければ許可されているそうです。

最初に書いたダスタフ・ストランデルさんは、スウェーデンも老人の介護施設は、徐々に変わっていったといいます。個室であたかも自宅のような快適な暮らしを行い、家族を招き入れ、施設内の人とのコミュニケーションを、図ることが自由にできるようにしています。写真で見ましたが、日本の施設のようにベットが主役ではなく、ソファーが主役で、面積も倍以上に広いのです。

施設内では、例え一人で動けない方も、ベッドだけの生活にしないで、車椅子かソファに座って過ごさせるようにしています。日本のように、人手を節約してベッドに縛り付けて危険を、避けるということはあり得ません。

ちなみに、ヘルパーの数は、スウェーデンでは人口10万人あたり884人であるのに、日本では17人というデータもあります。(1985年時)寝たきりを避けるための努力は、延命治療をしないだけではないのです。

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