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運転免許更新に、高齢者講習と認知機能検査を3月12日より強化

認知機能検査とレベル別高齢者講習で対応

無謀な交通事故のニュースは減りません。こうした事故は、かつては酒気帯び運転によるものでしたが、今は違います。高齢者であったり認知症であったり、一瞬意識が遠のくと言った病気であったりといったことで、命が失われています。

交通事故

高齢者だから、認知症だから、脳疾患があるからといった判断で、一律に免許を返納させるわけにはいかない現実もあります。地方では車がなければ買い物や通院も出来ない状態で、地方でなくても仕事で必要で、収入が無くなる方もいます。

こうした個々の実情を加味した改正道路交通法が、平成29年3月12日よりはじまります。

高齢化社会を舞台にしたコミック誌に、『2022年には65歳以上の内運転免許保有者は77.5%。つまり高齢者のほぼ全てがドライバーになる』というものがあります。高齢者全てのドライバーに対して、交通法のケアをし続けることができるのかが、心配です。

いずれにしても今回の道路交通法は、本当に細部まで考えられていて感心の一言となりました。

今回の改正道路交通法について

上記参照リンクの内容を、補足してみます。

運転免許資格のチェック

75歳以上になると、運転免許資格を2段階でチェックします。道路交通違反を行った際と、運転免許更新の際です。

71歳以上であれば、無事故無違反であっても、3年に1回の運転免許更新手続きを行います。高齢ドライバーは、3年に1回は、認知機能検査を受けることになります。

認知機能検査

チェックの第一段階は、認知機能検査を行います。

  1. 時間の見当識
    検査日の年月日、曜日、時間を回答
  2. 手がかりの再生
    イラストの記憶が、別の事を行った後でも記憶しているか否か。
  3. 時計描写
    時計のイラストを描き、指定された時刻を針で描けるか否か。

上記の検査結果から、3段階に分けます。

  • 第1分類 記憶力・判断力が低くなっている
  • 第2分類 記憶力・判断力が少し低くなっている
  • 第3分類 記憶力・判断力に心配のない方

ただ、この認知機能検査にも異論があり、実際75歳以上が2014年に起こした死亡事故の内、約6割が第3分類に属していたためです。想像ですがこの検査結果を考慮して、第1と第2の方は、自主返納をしたからではと思っています。

この認知機能検査で、認知症の恐れがあると判定された場合は、医師の診断を受けて、主治医の診断書を提出する必要があります。診断書で明確になれば、運転免許書が失効されることになるのです。

認知機能検査の後は、交通違反行為と運転免許証更新時とでは、手続きが異なります。

交通違反行為時のチェック

認知機能検査の結果が悪くなっている場合は、臨時高齢者講習を受講する必要があります。認知症の恐れがある場合は、医師の診断書提出命令が下されます。

運転免許証の更新時のチェック

認知機能検査の結果が第3分類の方は、高齢者講習の合理化(※詳しくは最後に記述)を受講することになります。第1分類と第2分類の方は、加えて高齢者講習の高度化(詳しくは最後に記述)を受講しなくてはなりません。

認知症の恐れがあると判定された場合は、医師の診断書提出命令が下されます。

70歳以上75再未満の方は、認知機能検査は免除されますが、高齢者講習の合理化を受講します。

免許証

認知症が自動車運転で不安な点について

高齢になると、体力が衰えるだけでなく、運動神経や判断能力も衰えてきます。 状況に応じた素早い判断と、反射的に体を動かすことが難しくなるのは、老化現象で特別なことではありません。

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逆に、毎日仕事で車を使用しているために、体が運転技術を覚えていて正確な運転ができる高齢者がいることも現実です。認知症であっても、正しい運転が可能という事例も報告されています。

通常の老化に加えて認知症が加わると、脳疾患の部位毎、進行状況具合によっても、不安事項が異なっていきます。高齢者が行いやすい運転ミスを、過去の事例からピックアップして確認することに加えて、個人個人に合わせた個人指導が必要になります。今回の改正でも、配慮の後が伺えます。

長寿政策科学研究部が発表した、『認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアルc』第二版の中に、認知症の種類毎に、心配な運転についてまとめてありました。

概要を把握しておけば、対策も打ちやすいかと考えますので、簡単に記載しておきます。

信号機

アルツハイマー

記憶の中枢である海馬が衰えるために、側近の記憶が失われていく疾患です。

運転中に目的地を忘れてしまったために、パニックになることがあります。 進行に伴い日時や場所がわからなくなる、空間的な位置関係の悪くなっていきます。運転中に道に迷ったり、センターラインをはみ出したり、車庫入れの時車を擦ったりするようになります。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血により、脳に血液が送れなくなり、神経細胞が死滅する疾患です。

日常生活で、活動の意欲の低下が見られます。運転中でも、集中力が低下して刺激に対する反応時間が遅くなったり、人や建物との距離感が鈍くなります。人や他の車両の速度と、自分が運転する車との速度のバランスもとりにくくなっているのです。

レビー小体型認知症

調子の波が大きく、実在しない物が見える幻視や、物を見間違える錯視があります。手足の震えや歩行障害などのパーキンソン症候が、加わることもあります。

症状が変動しやすいことや、パーキンソン症候により体の動きが遅くなることから、運転が危険になることも考えられます。

前頭側頭型認知症

ルールを守るなどの社会的行動を司る前頭葉が、萎縮する病気です。

初期症状は、記憶障害や視空間認知障害が見られません。幻覚や妄想も少ないために、自動車運転技術は保たれています。しかし、交通ルールが守れないために、事故に繋がる可能性が大です。

課題はマンパワー

今回の改正道路法では、将来にわたってマンパワーの確保が出来るかということになります。(あくまで個人的な意見です。)

認知機能検査や高齢者講習を行う警察官の人員に加えて、診断書を書き続ける医療機関の人材確保の問題もあります。

高齢者マーク

高齢者講習(合理化)

高齢者講習(合理化)は、70歳以下の人のようにビデオを見るだけではありません。受講時間は2時間で、実車して運転技術を判定されます。ドライブレコーダーで、録画を行い指導が行われます。

指導要領には、第1分類から第3分類に応じた指導方法が定義されていて、運転免許取得時のようにひとつひとつ課題をクリアする方法がとられています。

高齢者講習(高度化)

認知症のおそれがある第1分類と第2分類の方は、高齢者講習(合理化)に加えて、個別指導も加わります。合わせて受講時間は、3時間となります。

個別指導の受講時間は、1時間。通常の運転技術に加えて、高齢者にありがちな運転行動(アクセルとブレーキの踏み間違えや、信号機に気づかない等)を重点的にチェックしています。思わずうなりたくなる確認項目ですが、これからはこの講習が重要な課題になることは、よくわかります。

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