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ヤングケアラーの支援制度が乏しすぎる

問題が表面化せず孤立化する

核家族化や少子化で家族が少人数になり、離婚率も高かくなる一方です。シングルマザーなんて言葉を日常的に耳にする現在、介護にも深刻な問題が発生してきています。

従来介護は大人が行うものと共通の認識がありましたが、現実は学業や日常生活に影響を与えるほど、家族の介護や世話に時間を費やしている子供が増えてきました。子供自体が少子化で増えていませんので、「介護を行う子供の比率が高くなった」といった方が良いかもしれません。

片親であれば仕事に行くので、子供が家事を取り仕切るようになります。もし、家族に慢性的な病気や障害、精神的な問題を抱える方がいて、祖父母など頼れる大人がいなければ子供が介護も行います。容態の悪化すれば、子供の負担も徐々に増えていきます。

こうした大人が担うような介護の責任を引き受け、介護される方の身体状況に合わせた介護、見守り、感情面のサポートを行っている18歳未満の子供のことをヤングケアラーと呼んでいます。また、18歳以上の若者を「若者ケアラー」と呼ばれています。子供の皿洗い

ヤングケアラーの実態

通学や仕事をしながら家族の介護している15~19歳の子供が、2017年時点で全国に推計3万7100人います。この数値は、毎日新聞が総務省の統計を独自に分析した結果で、政府が積極的に集計したものではないことも問題です。

3万7100人のうち、週4日以上介護しているのは1万2700人、週に1~3日は9800人、月に3日以内は7200人を上回ります。ヤングケアラーの3割強が、週4日以上介護をして学業と介護の両立を行わざる得ない状況です。
上記の総務省のデータは15歳以上ですが、自治体や研究者の調査では、14歳以下の小中学生にも一定数のヤングケアラーが多いことが分かってきています。

この数値は由々しき問題で、本来経験しなければならない学業やクラブ活動、趣味活動、遊びなどを犠牲にしている子供が多いということです。

手伝いの域を超える過度な介護が長期間続くと、心身に不調をきたしたり、遅刻や欠席が多くなって学校生活への影響を与えます。他の子供とは違う環境にいることを自覚すれば精神的に孤立感が増し、経験すべきことや学業に対してもやる気も失うものです。

新聞などで報じられているヤングケアラーの中には、進学や就職を断念してしまい、不本意な将来を受け入れている子供も多いのです。介護をし続けたために、成人してからの生活苦に悩まされているとも書かれていました。

ヤングケアラーに関しては、事の重大性が周囲の大人にはわかりにくく、たとえ知る状況にあっても家族の問題だから致し方がないと、支援の手を差し伸べられません。具体的な支援の方法も、介護に携わる人や携わった人が側にいなければそのまま放置され、事態の改善のないまま深刻化していきます。

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ヤングケアラーにならざるを得ない状況

日本ケアラー連盟のホームページにある、ヤングケアラーに陥る状況が書かれていました。

  • 障害や病気のある家族に代わって家事をしている
  • 家族の代わり、幼い兄弟の世話をしている
  • 障害や病気のある家族の身の回りの世話をしている
  • 目の離せない家族の見守りをしている
  • 家計を支えるために労働し、障害や病気のある家族を助けている
  • がんや難病など慢性的な病気に家族の看病をしている

ヤングケアラーが担う介護の例

子供や若者が担う家事や介護の例を、日本ケアラー連盟の資料より抜粋します。強調したいことは、10代の子供が毎日下記のような労働を無期限でやり続けなければならないことです。これはシンドイ。

家事

料理、洗濯、掃除など。

日常生活や身辺のケア

投薬管理、着替えや移動の介助、入浴やトイレの介助。

情緒面のサポート

見守り、声掛け、励ましなど。

その他

金銭の管理、通院の付き合い、家計を支えるための銅像、家族のための通訳、兄弟の世話。

ヤングケアラー支援

英国は2014年から、ヤングケラーの実態調査や適切なサービスの提供を自治体に義務付けています。オーストラリアでは、他の子どもと同じ権利が守られると法律に明記され、ヤングケアラーのための奨学金などの支援制度があります。

日本は、ヤングケアラーの実態を正確に把握した全国調査はありません。総務省の就業構造基本調査から、世代別の介護者数を推計後、毎日新聞が独自のオーダーメイド集計を行って割り出している状況です。政府や国民の関心が低いのです。

ヤングケアラーの実態が明らかになっても、いじめや虐待と比べると緊急性が低いとされて周囲の支援も得られません。たとえ介護のために不登校になっても、学校では親の手伝いをする『良い子』の印象を持つのみで、学ぶ機会を失われた子供の権利を支援する動きまでには至らないのです。

もっと言わせてもらえば、ヤングケアラーの該当者であるかどうかも周囲の人に気づかれにくいのです。ケアを行っている子供は「かわいそうと思われたくない」、保護者側は「外部に知られたくない」という気持ちがあり、表面に出さないケースが普通だからです。

ヤングケアラーが介護の悩みを相談できる場所や、介護の状況に合わせた支援サービスの情報提供してくれる組織が必要です。追い詰められている家庭は、支援サービスを調べる余裕はないので、学校や病院、ケアマネジャーの支援体制を、子供の環境の中でも強化させるべきです。

埼玉県の支援例

埼玉県では親しい人を無償で介護するケアラー(ヤングケアラーを含む)を支援する全国初の条例を制定しました。実態調査を行い、支援が必要な子供には学校や福祉など関係機関が連帯して対処するとしています。

もっと、広がれ!!

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