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『介護殺人』を読んで思うこと

加害者に共通していることから言えることは?

この本は毎日新聞が、2010年から2014年の間に近畿圏と首都圏で起きた介護殺人を、取材した内容が中心になっています。

本のタイトルが衝撃的で、大切な家族を手にかけた罪で苦しんでいる人を、取材することへの反発はありました。多くの場合、加害者は取材に応じることがなく、何年たっても罪の意識に悩まされ続けているそうです。

著者は毎日新聞大阪社会部取材班で、個人名を出さないまま、こうした残酷な本を平気で出すのかと怒りも正直覚えました。しかし、手にとって読んでみました。

毎日新聞が加害者に共通していることは、不眠であるといいます。夜寝れないことが、体内リズムを崩し、うつに進行させます。さらに不眠が長期間続くことで、将来を悲観し殺人につながっていくのだそうです。

加害者の手記を読み進めるうちに、いくつかの共通点にも気が付きます。貧困であるために、福祉サービスを充分に利用しきれていません。

どの方も懇親的にまじめ過ぎるということです。介護殺人をしなければならないほど、追いつめられていながら、その状況に怨みごとをいうことなく(書いていないだけかもしれませんか)、一人で責任を負い続けようとしています。

私が感じていることから説明

その他に個人的に感じたのは、介護に関わるのが遅すぎで、もっと早くから危機意識をもち行動するべきだったと考えます。また、世間の目を、気にし過ぎているのではとも思いました。

もっと早くから危機意識をもち行動を

この本の中の介護を受ける側の高齢者、つまり被介護者は重症か、手がかかる方ばかりです。殺人になるほどだから、当たり前と言えばそうです。

介護技術はある意味、学習や反復練習も必要と感じます。症状が軽いうちから、準備やケアの環境を整えていくと、ハードルの高い重い症状も乗り越えられやすくなります。 症状の軽いうちから他の家族と連携をとって手を借りられるように、促す必要もあるでしょう。最初は、半年に1回しか顔を見せない家族であっても、『時々顔を出してね。』を言えば、いざという時に何かの役に立ってくれます。

実際、加害者の多くは男性であることは、以前から言われ続けています。男性の次は、未婚の女性です。介護の前に家事に慣れていないことが、問題といわれています。家事が不得手であっても、被介護者に手がかからないうちから、家事サービスの検討をしておくなど方法はあります。

被介護者の症状が軽い時点では、相談できる施設や、他の方と話ができるコミュニィの場がありません。最近では流れが変わって、自治体で介護の勉強会や、新聞や書籍で情報が流れてきています。もっと数を増やすべきです。

認知症の症状の一つである暴力や大声を出す、徘徊などの問題行動は、周囲の環境で抑制させることができます。このサイトを立ち上げた際に参加した病院の講習会では、問題行動(BPSD)を、抑制させる方法について詳しく説明していました。 手紙とペン

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介護者は常に罪の意識にさいなまれている

先日、2年ほど前に認知症のお母様を施設に入所させた方と、偶然お話しする機会がありました。もう、2年も前のことなのに、お母様と怒鳴りあったこと、お母様を叩いたことを話していました。そうした行為に対して、強い罪の意識にさいなまれているのです。

人は死が近づくと子供に帰ると言いますが、ことの善悪が分からない子供に接するように、時には介護者は親にならなければなりません。度重なる排泄の失敗に、つい手が出てしまうのは、そういう覚悟ができないためです。

手が出た後は、重い罪の意識と自己嫌悪が待っているはずです。私だって手は出さないものの、怒鳴りあいますが、そんな日は1日中、引きずっています。

罪の意識は人を追い詰めます。たまたま、その現場を見合わせた人が責めようものなら、さらに自分を責めて追い詰めてしまうのです。

介護殺人の加害者は、近所では模範的な介護者で懇親的でした。介護書にも、被介護者には優しく接するように書かれていますし、医師もそうであれと言います。加害者は良い人であろうと強い意志で、努力をし続けたのでしょう。だから、自分を追い詰めてしまいました。

被介護者を傷つけることはしてはいけないけど、ガス抜きは必要です。多くの介護情報が出回っていますが、誰も介護者のガス抜きの方法を、提案してくれている方はおりません。レスパイトなんて言葉がありますが、どこで活用されているのでしょう?

ところで、大声を出して近所にどう思われても、私はいいよ!

毎日新聞の介護殺人に至る理由

先にあげたとおり、不眠と貧困が原因です。

不眠がうつに、そして介護殺人に

介護現場に詳しい医師によれば、認知症や痛みを伴う病気の患者、寝たきりの状態が長く続いた患者は、睡眠障害や妄想の症状を併発することがあるそうです。昼夜が逆転し、夜中に目を覚まして大声で騒いだり、トイレに頻繁に行きたがったりするそうです。

私が知っている介護者も、夜に備えて夕食後に、必ず仮眠をとると言っていました。

毎日新聞が取り上げた加害者の多くは、『眠らない家族』を介護しています。慢性的な寝不足が、心を体を疲弊させていきます。やがて、うつ状態につながるそうです。

司法の世界では、犯行当時が心身喪失で刑事責任能力がなかったものに関しては、罰しません。介護殺人の判決の多くは、執行猶予付きとなるか、実刑でも2年6カ月~4年程度です。実際の殺人の判決は、死刑か無期懲役か5年以上の懲役の判決が下されます。

量刑が軽いために司法は、あえて時間とお金がかかる加害者の精神鑑定を、行うことには積極的ではありません。加害者の精神状態を専門家の手で詳しく検証しなければ、背景の解明や再発防止は難しくなります。

貧困が介護殺人に

介護離職に光が当たり始めていますが、国の財政とのからみから、在宅介護を推進しています。現在、年間10万人が、介護離職しているそうです。

職を失い収入減を断たれて介護を行えば、貧困は避けられません。お金がなければ、一にも二にも、どうにもなりませんよ。

企業の介護休暇制度は、まだ始まったばかりです。他の国での介護者支援については、こちらで説明しています。また、在宅介護者支援で、先進的な政策をとっているのは、イギリスです。イギリスでの在宅介護者の支援を、イギリスの介護者支援サービス、レスパイトケアを知ろう。で詳しく書きましたので、参考にしてみてください。

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