今の介護サービスには、介護者支援が盛り込まれていない
2000年より施行された介護保険サービスにより、高齢者は失った身体能力や生活遂行能力を補うために、介護サービスが受けられるようになりました。非介護者は生活へのハリも取り戻し、介護者の介護負担も減りました。
しかし、介護者の『レスパイト』つまり、息抜きや小休止の必要性の声も生まれ始めています。その理由は、在宅介護者による介護殺人の実情が、徐々に明らかになってきたからです。
日本の介護保険サービスには、介護者支援策が明確でない
7月の初旬にNHKで放送された『介護殺人当事者たちの告白』によれば、週2件の割合で、介護殺人が行われています。昨年まで6年間に発生した『介護殺人』は少なくとも138件のうち、半数は介護を始めて3年以内に事件を起きているそうです。
しかも、介護サービスの利用状況を調べてみると、ディサービスなどの介護サービスを利用していた方が4分の3にも上っていることが分かりました。ちゃんと介護サービスを利用しているのに、介護者の心の闇は無くなりません。
介護負担からくる介護殺人は、介護者1人による孤立した介護、長年の介護疲れからきています。
個々の介護者の悩みにも光をあてて
一つ言えることは、従来の介護サービスが、介護者を完全に救済しきれてはいません。一律に設けられた介護サービスは、個々の介護者の経済力、仕事の勤務体系、体力などを考慮してつくられていないからです。
『仕事の継続が可能であるか?』、『介護サービスの費用の支払いは継続的に可能か?』、『介護者の体力的は持つか?』、『精神的に継続可能か?』など、問題点は山積みのはずです。
レスパイトが当然の権利になれば
しかし、どうでしょう? こうしたことを相談する場所がありません。介護者が一時的に介護から離れて、心身をリフレッシュさせるためのショートステイや、訪問介護の制度は日本にはありません。
介護殺人の原因である、介護者の孤立感と長年の介護疲れを解消させる、レスパイトケアを、行政が支援するとか、法律で定める制度の必要性を感じます。
介護者自身の精神的なケアをする場所がない
認知症の場合は、同居者しか分からない介護の困難さがあります。
男性介護者特有の悩み、老々介護の悩み、認々介護の悩み、過去の夫婦間のわだかまり、親子間のわだかまりも、いざ介護をする立場の心境は複雑です。
こうした、介護者に対する支援策が、日本に願います。
他の国のレスパイトケア
介護者支援の対策は、イギリス、フィンランド、アメリカなどで、国を上げて議論されています。
イギリスの場合
1996年、イギリスは世界で最も早い介護者支援策を盛り込んだ、介護法を制定します。1999年、ブレア政権化に置いては、介護者のための介護者戦略が、10年計画として打ち出されました。
具体的な政策を上げますと、ケアに従事した期間を国の第2年金機関に算入する、介護者が仕事に戻れるような支援策を行う、介護者が休息するための特別予算を組み、介護者は財政的に困難な状況にならないように支援を行う、などなどが挙げられています。
イギリスのレスパイトケアは、さらに掘り下げた内容をこちらに記述してあります。
アメリカの場合
アメリカでは、2006年にライフスパン・レスパイト法が、連邦法として制定されています。アメリカの在宅介護サービスの中には、訪問看護や家事支援、移送サービスなど本人の介護に加えて、レスパイトケアも項目としてあげられているのです。
具体的には、介護者への金銭的支援、就労支援などがあります。特に就労支援に関しては、従業員50名以上の会社に勤める介護者は、12カ月のうち最大で12週間の無給休暇をとる権利があります。この制度が利用できれば、職を失わずに就労を継続させることが可能です。
また、介護者アセスメントへの取り組みも関心が高まっています。高齢者本人の介護サービスへの満足度だけでなく、介護者の健康状態や生活環境の定期的なチェック、介護者の主観的健康や介護負担感、精神的健康に関する心理学的測定のほか、その介護者が家族や友人からどのような心理的・物理的なサポートを受けており、それにどの程度満足しているかといった評価も必要とされています。
アメリカのレスパイトケアは、こちらで詳しく掘り下げてみました。
ドイツの場合
日本の介護保険制度の作成にあたって、参考にしたドイツでも、レスパイトケアは用意されています。介護生活から、いったん解放されて心身リフレッシュする権利、あるいは病気や体調不良のために急に介護ができなくなった時を想定して、ショートステイや訪問介護が利用できるようになっています。
オーストラリアや欧州連合(EU)の場合
介護者支援を法律でうたい、現金給付やレスパイトケアを取り入れています。
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