スポンサードリンク

軽度要介護者の生活援助サービスや福祉用具貸与サービス縮小

高齢者にとって本当に必要なサービスか否かが問題

厚生労働省の社会保険審議会の部会で、要支援1から要介護2までの「軽度者」へのサービスの見直しを検討中です。 今後の検討課題と工程表が、厚生労働省のホームページで発表されました。

工程表によると、2016年の年末までに、従来の介護サービスや給付のあり方について、関係審議会などで検討を行います。年明けから法案を整備し、2017年度通常国会での審議されるスケジュールとなっています。車椅子の高齢者

介護保険料の引き上げの前に、サービスの見直しは正しい

背景は、少子高齢化にともなう介護人材の不足、介護保険の費用が財政を圧迫していることです。ただ、こうした金額的な面だけでなく、現在実施している介護サービスの調査も十分に行われていて、納得できる部分も少なからずあるのです。

今回の改正を調べていて、最初に気づいたことは、介護保険の制度の詳細について、知っている方はそう多くありません。今回の改正で問題になっている、生活支援の件についても、受けられるサービスの詳細を、要介護者の家族である私でさえ知らなかった状況です。

介護職や自宅で介護を行っている人だけでなく、国の税金で賄われている介護サービスの実体を、把握して欲しいと願います。介護保険料の引き上げや、介護保険を支払う年齢を引き下げるとか、介護職の給料を下げるといったこと以前に、現在行われている介護サービスが有意義であるか否かを、見直しから始めるのは理にかなっています。今回介護サービスの検討課題になっているのは、軽度要介護者(要支援1・2、要介護1・2)向けの、介護サービスの縮小です。

  • 生活援助サービスの削除
  • 福祉用具の貸与の削除
  • 住宅改修は原則自己負担

厚生労働省から、 軽度者への支援のあり方と、 福祉用具・住宅改修が、ホームページに報告されています。

さらに、参考資料も添付されているのです。この参考資料には、現在の介護サービスの問題点の調査結果が書かれています。介護現場にいる方から、直接聞けたとは思えないような、利害に合わない事実もあります。こんなことも含めて、介護に関係していない人も、知るべきです。

後に、これらの資料を元に、気がついた点についてピックアップします。

現在の介護費の急増

誰もが知るところである介護費の急増ですが、数値でみるとやっぱりすごいことになってます。

介護保険制度が始まったのは、2000年で介護費は約3.6兆円で、昨年2015年度は10兆円を超過しました。人口構成の最も高い団塊の世代の全てが、75歳以上になる2025年度は、約20兆円と試算されています。介護人材は、2025年度には、約38万人不足すると言われています。

現在、要支援1から要介護2までの「軽度者」は、介護保険制度利用者全体の約65%を占めています。介護保険制度は、3年に1度見直しが行われるこの機会に、要支援1から要介護2までの「軽度者」のサービスの見直しを行えば、社会保障費の削減につながることは言うまでもありません。

また、介護保険ではありませんが、社会保障費用の見直しという点で、医療費の負担も1割から2割へという改正案もあり、少子高齢化に向けて厳しくなってきています。

生活援助サービスの削減

生活援助サービスとは、介護福祉士などが、自宅へ訪問して行う訪問介護の一つです。訪問介護は、掃除・洗濯・買い物・薬の受け取りといった生活援助サービスと、利用者の体に触れて行うサービス(入浴、着替え、おむつ交換)などに分かれています。

スポンサードリンク

要介護度が高くなるにつれて、身体介護の割合が高くなりますが、要支援1から要介護2までの「軽度者」の場合は、訪問介護サービスのうち、半分が生活援助サービスとなっています。

さらに、利用している生活援助サービスの内訳は、掃除が75.2%、一般的な調理・配膳が65.5%となっています。これらのサービスは、専門性の高い仕事であるとはいえず、介護職の不足が見込まれる将来、介護福祉士に従事させ続けるのは、問題ではないかという見方があります。 増え続ける高齢者に対して、重度者や医療ニーズの高い高齢者に対して給付を重点的におこなうべきなのです。

一方介護提供者側は、生活援助サービスがなくなると、身体介護が必要であるのに室内がゴミだらけなら、適切な介護を行う事ができません。清掃をせざるを得ない状況もあり、生活援助サービスは、介護度に応じて削除するべきでないと主張します。

今回の改正の大きなポイントは、介護予防の推進です。要支援1から要介護2までの「軽度者」、特に介護支援1、2の方は、できることが多いためにし好性を望む方が、大半です。既存の介護サービスとは、合わないはずです。

新たな受け皿を作って、介護予防につながるサービスを行うのが良いのではと書かれています。この新たな受け皿となるサービスを、『多様な担い手による多様なサービス』と書かれていて、NPOや民間事業者に期待しているようです。この辺のところが、不透明感が強くて、生活援助サービス削減だけが先走っている気がします。

福祉用具貸与の削減

要支援1から要介護2までの「軽度者」の場合、車椅子やベッドを生活に取り入れることは、自ら体を動かす意志を奪い、身体機能を後退させてしまいます。当サイトでも、 介護福祉用具の利用は、高齢者の自立支援に役立つか否かを基準に記述しましたが、自助具の取り扱いは注意するべきです。自助具とは、不自由な体の機能を補って自分で行動を可能にする道具を指しています。

要支援1から要介護2までの「軽度者」が、必要がないのに車椅子やベッドをレンタルすることは、QOL(生活の質)を下げます。要支援1から要介護2までの「軽度者」が利用するものは、歩行補助やつえなどですが、今回の検討会において、『貸与ではなく販売』、あるいは『貸与と販売の選択性』にしてはどうかと言われています。いずれも安いものですし、貸与の意味がないのではと言うのが趣旨です。

こうしたものは、自費で購入するべきという提案もあります。福祉用具貸与に関して、社会保険審議会がいうとおり、私は自己負担で良いと思います。その代わり、重度の身体機能の少ない方には優先的に、高機能な介護ロボットが導入しやすい環境を整えるべきです。

住宅改修は原則自己負担

住宅改修の場合は、同一の住居で20万を限度に、居宅介護住宅介護費の補助が受けられます。 今回の検討会で改修費用が妥当な金額なのか、疑問視されているのです。施工業者による技術・性高水準のバラツキが大きいと言う、保険者によるアンケート結果がでています。

ただ、これはリフォームの場合、普通にありがちな問題で、高齢者にとって必要な介護サービスであるか否かの問題とは、違っているはずです。ニュアンスとしては、安いリフォームの物件を、介護保険をあてにして高値をつけていると言う風に、資料から読みとれました。しかし、このことが、自己負担にする理由にはなりません。

また、個人資産の形成につながる面があり、持ち家の方が借家より断然有利です。そんな住宅改修の補助を、できるだけ小さくしたい意向もあるようです。

でもどうでしょうか?住宅改修は、階段やトイレ、バスの手すり、玄関の段差解消など、介護予防として意味のあることです。住宅改修を行わなかったばかりに、逆に、転倒して介護度を重症化させ、社会保障費が増えるということも予想されます。

公共の介護施設でなく自宅で介護すると決心しているからこそ、住宅改修を行うのであって、より自立した生活を送りたい高齢者をバックアップすることにもつながります。従って、住宅改修は、軽度や重度を問わずに、一律補助を出した方が良いと言うのが私の意見です。

スポンサードリンク