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自立支援介護の推進に、公的高齢者施設が待ったをかけた

これ、国の施策にしたら大混乱が起きるよ

日本経済再生本部から発祥した自立支援介護が、今後行なわれるのか否かが、目が離せません。

人間は、年齢とともに身体は衰えていくことは、避けられません。自立支援介護とは、こうした自然の摂理に逆らって、老化を回復させることを推進するものでした。いかがなものなのかと疑問を感じずにはいられません。木漏れ日

ところで、自立支援介護の話を出した、日本経済再生本部とは何なのでしょうか?日本経済再生本部は、第二次安倍内閣で、デフレ脱却、円高脱却、経済を再生する経済戦略の実現のために設置された組織です。本部長は内閣総理大臣、本部員は国務大臣によって、構成されています。

この日本経済再生本部で、行われる会議が、未来投資会議と名付けられています。昨年11月10日(木)に行なわれた第2回未来投資会議の中で、今後の日本の介護のあり方について議論されました。会議の中で提案されたのが、自立支援介護です。

自立支援介護に対して、『ちょっと待った!』を言い出したのは、公益社団法人 全国老人福祉施設協議会(全国老施協)です。昨年12月5日に、高齢者の虐待に繋がるのではという内容の意見書を、厚生労働省に提出しています。

全国老人福祉施設協議会とは、特別養護老人ホーム、老人ディサービスセンター、老人短期入所施設などを運営する社会福祉法人で組織された協議会となります。つまり、公的高齢施設が、反論していると考えて良いでしょう。後で、詳細を記述します。

自立支援介護とは

問題になっている、自立支援介護とは、今後増え続ける高齢者の介護費用の削減に向けた抜本的な改革案です。一端、要介護になった人をもう一度、自立状態に引き戻す介護を行なうことで、介護施設の利用者を減少させ、介護離職ゼロにも繋がる論理で展開されています。

この発言は、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授です。竹内孝仁教授は、多くの書籍を出しています。新聞にも広告が出された『田原総一郎が真実に迫る 認知症は水で治る!』、『水をたくさん飲めば、ボケは寄りつかない』、『日中おむつゼロの排泄ケア』などで、知られている方です。つまり、認知症や高齢者の疾病は、介護方法によって、回復させることが可能であるという意見を持っている方です。

実際、『田原総一郎が真実に迫る 認知症は水で治る!』をamazonで検索して、購入者のレビューを読めば、治ったといった内容の投稿を見ることも出来ます。私も、前向きな目標を持って介護をすれば、高齢者の状態は良くなると考えています。実際に、類似した内容を当サイトにも掲載しています。正直、認知症は治ると感じています。

でも、それは個別に行なうべきもので、組織的に行なえば無理が生じます。

第2回未来投資会議の中で、竹内教授は、実際に介護現場で起こった要介護者の回復の事例をあげて、介護の方法如何によっては、要介護度を下げることが出来ると言われています。

例えば、全介護で要介護4の方が、介護2になってビールを飲むようになったとか、徘徊を繰り返す認知症の方が、仕事に就いたとか、肺炎と骨折が自立支援介護で激減するなどです。

このことから、今までの出来ないことを助ける介助中心の介護現場から、高齢者の自立を支援する介護に軸足を移すべきと提言しています。高齢者自立支援の最終目標は、認知症の症状改善、オムツではなくトイレでの排泄、胃瘻や流動食の方が口から普通の食事が行えるようにするとあげています。

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竹内教授が提言する方法で介護を行なえば、8,692億円の費用が削減できると、試算をしています。

自立支援介護を推進させるために、下記の2点を遂行するのだそうです。

  • 要介護度を軽減させた事業所にインセンティブ(報奨金などの支給)
  • 自立支援の標準的な取り組みを行なわない事業所には、ディスインセンティブ

(情報元:健全かつ持続可能な介護保険のために-自立支援介護のすすめ 国際医療福祉大学大学院 竹内孝仁

いわゆる『自立支援介護』についての意見書

こうした『自立支援介護』について、公益社団法人全国老人福祉施設協議会より出された意見書の内容を、私の意見を挟みながら、まとめてみました。

全ての人に強要させることは良いことなのか?

最初に、こうした介護方法を全ての要介護者に強要させることは、無理があるのではということを、下記の3点から述べています。

一端、要介護者が回復することだけを、評価尺度としてしまうと、要介護の改善の見込みが難しい高齢者の受け入れを、避ける施設が増える懸念があります。行く先のなくなった要介護者が、在宅介護をしなければならない状態になってしまいます。

利用者が望まない栄養摂取や、リハビリテーションを義務化させることは、果たして良いのかということもあります。

また、身寄りがないなどの事情で、在宅復帰を望まない高齢者に、回復した後の生活に不安感を生じさせる結果になる危険性もあるのです。

人の老いは自然の摂理

言うまでもなく、人間が老いて身体の状態が重たくなることは、自然の摂理です。それでも施設においては、自然の摂理に逆らって、少しでも生活の質を向上させるために、努力が続けられています。

施設に身内を預けている方なら、知っているはずです。預けた高齢者の生活の質が、向上したことを体感しているからです。

ただ、生活の質の向上は、必ずしも要介護度に反映することはありません。笑顔が増えたとか、リクレーションに前向きに取り組むようになったとか、そんな些細な事が一杯増えていきます。介護度が変わるほど回復しなくても、年相応で良いと心の中にあることも、利用者の満足度に繋がっています。利用者としては、例え現状維持であっても、快適な生活環境を整えてくれている、施設への感謝の気持ちの方が大切なのです。

こうした利用者の感謝の気持ちが、変わらないサービスの継続に繋がっているはずです。でも、意見書にあるように、入浴、排泄などの日常生活の支援の評価を下げ、ひたすら、要介護度の軽減に重点を置いた介護になったとしたら、今の快適な生活環境が維持できるのでしょうか?不安です。

確かに、自立支援介護で回復する高齢者もいたかもしれません。しかし、全ての高齢者に当てはまるわけではありません。病状や進行度合いによって、回復が困難な方も、沢山います。

病気や障害状況といった、身体機能だけの問題でもありません。高齢者の取り巻く環境が、身寄りがない、介護すべき人が高齢であったり認知症である場合は、施設に終身、居続けたいと考えている方もいるはずなのです。こういう方達にとっては、いつか施設を出なくてならない不安感を植え付けることになりはしないでしょうか?

この自立支援介護が虐待になり得ると、意見書にありましたが、まさしく同感です。特に、終身生活が出来る施設と言われている特養においては、従来の介護主旨に則って行なうべきなのではないでしょうか?

(情報元:いわゆる『自立支援介護』について(意見)

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