認知症の記憶が音楽療法で取り戻した、ドキュメンタリー映画

認知症を治療するではなく、療法によって回復させる

認知症の記憶を、自分の思い入れのある音楽によって取り戻すことができるそうです。一人のソーシャル・ワーカーによって、認知症患者の回復の様子を描いた実話が映画化されています。『パーソナル・ソング』。昨年12月に日本で公開され、今年5月20日DVD発売されました。ピアノの鍵盤

無口だった老人が音楽によって詩人になる

ソーシャル・ワーカーのダン・コーエンが、iPodに音楽を入れて始めた音楽療法は、3箇所の施設から始まります。コーエンは、認知症患者が孫を可愛がる姿を見て、愛情に関する脳の部分は傷ついていないことを知り、音楽療法を思い立つのです。

記録映画をとるための資金集めのために最初に撮影された、94歳のヘンリーというおじいちゃんは、無表情で施設の片隅で一人座っていました。自分の娘の話に興味を示さず、娘であるかどうかも判断できなかったのに、iPodで懐かしい曲を聴いた途端に変化が現れます。

顔は活気づき、目は見開き、曲を口ずさみながら体でリズムを取り始めます。その後、ヘッドホーンを外して、医師の「音楽とは何か?」という質問された時、「音楽とは愛と夢だ。世界は音楽を必要としている。神が私に音楽を与えてくれた。」と答えます。まるで、おじいちゃんの言葉は、詩人のようではありませんか?

映画の反響は大きかった

この様子を写した動画をインターネットで流したところ、1週間で再生回数が700万回に上がったということです。その後、映画化された後、ヘッドホーンによる音楽療法をとりいれた施設は、世界で650箇所の施設に広がっていきます。

映画の内容

映画の内容は、コーエン氏の音楽の入ったiPodを聴いた、多くの認知症患者の生きる力を取り戻した物語です。映画の中では、最初は無反応で存在しているだけの患者が、生き生きと目を輝かせ、歌い、しゃべり、質問に答える姿が映し出されています。

この映画は、現在の認知症治療に対して疑問を投げかけています。中核症状に加えて、暴力や徘徊、奇声を抑えるために使われる、薬の投与以上に、音楽療法は効果があると語っているのです。「抗精神病薬は灯りを消すことはできるが、灯すことはできない。音楽は患者の心に生命の灯りを灯すことができる。」と語る医師に、救われる認知症患者は沢山いるはずです。

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音楽を聴くという行為は誰にでも簡単にできる

映画を制作したベネット監督によれば、「人格が形成される若い頃に聴いていた音楽を探る作業は重要で、楽しいものだ。一般家庭でもダンの方法は簡単にできるよ」と話しているそうです。

個人個人のお年寄りにとって思い入れのある曲や音楽を、見つけ出す事ができれば、ヘッドホーンを掛けて、聴かせていけばよいからです。ただ、思い入れの曲探しは、家族の協力が必要だったり、青春時代の懐メロをピックアップさせて聴かせて反応を探っていかなければなりません。

でも、デイや施設の中でのレクレーションの中でも、偶然わかることも良くあることで、そう難しくありません。

音楽療法と認知症の関係を調べてみた

そもそも、何故、音楽療法が認知症に良いのかを調べてみます。

感情や本能的な行動を決定する大脳辺縁系

好きな音楽を聴いていると、大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)という古い脳が刺激を受けます。大脳辺縁系は、大脳新皮質の内側に存在し、本能的な行動や情動に必要な役割を担っているところです。

音楽を聴いた時、好きか嫌いかを過去の経験などから判断し、好きな音楽を聴くと、脳内麻薬物質と呼ばれるドーパミンやβエルドルフィンが分泌されます。ドーパミンはやる気の神経伝達物質で、快の感情、意欲、学習などに関わっています。こうした前向きな感情は、行動も決定して前向きにしていくのです。

音楽の刺激は、大脳辺縁系のみにとどまらない

大脳辺縁系に伝わった刺激は、扁桃体や記憶を司る海馬へも伝わっていきます。聴いた音楽と共に、その場の空気や感情までも同時に記憶として定着させます。

音楽を聴いた時、かつての思い出が一瞬にして同時によみがえるのは、元々人間の脳の構造上の問題だったのですね。

脳と音楽の繋がりの書籍を出しているサックス医師の談

映画『レナードの朝』の原作者であり、イギリスの神経学者であるオリバー・サックス医師は、脳と音楽の繋がりについて書籍を出版しています。

サックス医師は、音楽療法が認知症患者に効果的な理由をこう説明しています。「音楽は感情に訴えかけることができるので心を呼び覚ますことができる。脳のさまざまな領域に届き、当時の記憶を蘇らせる。そして認知症によって混乱してしまっている思考や言語の部分とは、違う運動や感情の領域と結び付くために、認知症によるダメージが少ないのだ。」

また、音楽は人間が体験する中で最も脳に深く印象を与えるもので、普通アクセスができない深い感情や記憶まで蘇らせることができるとも語っています。

音楽療法は、医学的にも解明できる有効な療法なのです。

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