昔話が多いのは、無意識に回想法で、自らの自尊心を回復させているから

昔話が脳のリハビリになっている

高齢になるに従って、昔話が多く話が長いものです。今日は1時間くらい付き合ったから、もう話も尽きているだろうと考えても、また、食事の時に、同じ話を何回も何回も繰り返します。

話している時は、すっごく楽しそうで、こんなに我慢して話に付き合っているのだから、少しは感謝してくれるのかと思いきや、本人は話し足りないようです。話を聞いている相手が自らの話を楽しんでいようがいまいが、そんなことは当の本人には興味がありません。まるでステージに立ってショーを演じている、歌手になったようです。

過食症の人が、食べても食べても満腹感が得られないのと同じで、おしゃべりをし続けても、心が満たされないようです。ケアマネージャが訪問した際は、『話をする人がいないので、テレビを見ているけど、向こうはこちらの話に返事をしてくれない』とぼやきます。『こんなに時間を割いて、話を聞いているじゃないのぉ~』と、大声を出したくなるほどです。 食事を作る娘と話が止まらない高齢者

高齢者の昔話には重大な意味がある

介護人としては、付き合っても付き合わなくても、文句が出るなら放っておいた方が気が楽と、投げやりな気分にもなるわけです。

ところで、この高齢者の昔話は、衰えていく自らの体と心への不安に対する、健康チェックのように感じます。自分なりに、快活に話ができるその状況に、安心感を得られるからです。

ショッキングな事件に襲われた人は、時として記憶を失うこともありますが、昔話ができるということは精神状態が良好な事を表しているのでしょう。かつての記憶を手繰り寄せながら、話すのは脳にも良いのです。

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回想法は認知症に良い効果がある

過去の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話をすることで脳が刺激されて、精神状態を安定させる効果を期待できます。長く続けることで、認知機能が改善されることも明らかです。

この方法は、回想法として確立されたもので、アメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法です。日本でも、認知症患者のリハビリテーションや、グループホームなどで活用している手法となっています。

方法は、特別な技術や知識が必要な訳ではなく、本人の子供の頃の記憶につながる、おもちゃ、本、写真、映画、音楽などを用意し、話しやすい環境にして、昔話に耳を傾けます。

ADLの記憶保持

子供の頃の記憶を、繰り返しよみがえらせ明確にさせることで、ADLに関する記憶を失わない歯止めになるはずです。10歳から15歳くらいの記憶には、ADLの記憶が含まれているので、この期間の記憶があいまいになってしまうと、生活ができなくなる危険があるからです。

ADLとは、activities of daily livingの略で、食事・衣服の着脱、移動、トイレ、整容、入浴など生活を営む上で不可欠な基本的な行動を指します。つまり、高齢者が一人で生活を営む上で、なくてはならない記憶なのです。

さらに、回想法を行うことで、自らを再認識させ、自尊心の回復に役立つのです。記憶に残っている事象は、楽しい事ばかりなので、言葉にして聞いてもらうことで、さらに幸福感を感じます。近い将来、訪れるであろう死への恐怖と不安を和らげられるのです。

過去の記憶が、明日の活力を生み出す

また、回想法は家族や周囲の人との人間関係も、円滑に保つ意識をもちます。集団生活の中での役割や、人への気配りも行おうとします。新しいことへの興味もわいてくると言います。

毎日毎日同じことを聞かされている、介護人(身内)には同情を思わずしてしまいますが、これも、リハビリの一つと考えて、腹をくくって付き合うより方法はないということでしょう。やむをえません。

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