お酒はコントロールして飲んでください
アルコール性認知症はその名が示すとおり、長期間大量のお酒を飲み続けておこる脳の障害です。他の認知症に比べて、原因が一つでわかりやすくなります。
また、お酒はカリウムやナトリウムを奪い、脱水症状を起こします。水分が減少した血液は、血管を詰まりやすくし多発性脳梗塞を発症させ、脳血管性認知症になることもあります。
お酒は体に悪いと知りながら、つい飲み続けてしまう、飲まなければ禁断症状が出て、飲まずにいられなくなる依存症を引き起こします。麻薬や大麻、ニコチンなどと同じです。アルコール認知症は、アルコール依存症が進行した脳障害ですので、まずはアルコール依存症にならないことが先決です。
2008年に厚生労働省が調査したアルコール依存症患者数は、4万人以上です。 1999年より調査を行っていますが、年々患者数は増加傾向にあるようです。最近のデータを探しましたが、見当たりませんので、こちらが最新でしょう。(参考資料:平成23年度 アルコールシンポジウム「アルコール問題を考える」 の23ページ目にあります。)
依存状態になる理由
最初は、ストレスの発散や不眠症解消が、飲む理由でしょう。お酒を長期間飲み続けると、酔わなくなってきます。お酒がもたらす心地よい酔いを強く求めるようになり、その気持ちをコントロールすることができなければ、飲む量は増えていきます。
最近お酒が、前頭葉の脳細胞の一部を破壊し萎縮させることが、分かってきました。前頭葉は、知能や言語、身体機能に影響を与えませんが、思考や創造性を担う場所です。前頭葉が萎縮する前頭側頭型認知症の方は、社会的な行動がとれずに、急に万引きなどを繰り返すようになります。
飲酒の量のコントロールができなくなるのは、前頭葉の萎縮のせいといわれています。社会的行動がとれなくなるのと同様に、自分の感情をコントロールすることができなくなってしまうのです。
飲酒の量が増え続けると、お酒を止めたときに起きる退薬症状に悩まされます。以下が退薬症状です。
- 気分の不快感
- 不眠
- 発熱、動悸
- 手の震え
- 頭痛、腹痛
- けいれん
- イライラ感
- 幻視、見当識障害、せん妄など
こうした退薬症状は、多くの場合、お酒を止めて数日後に消失しますが、退薬症状をお酒を飲んで消せることがわかると、また、飲酒をコントロールすることが出来なくなっていくのです。
お酒とウェルニッケ脳症について
糖質やカロリーが高いお酒は、消化する内蔵の負担も大きくなります。ビタミンB1は、糖質がエネルギーに変わるときの補酵素として作用しますので、お酒を飲み過ぎるとビタミンB1が不足していきます。
ビタミンB1は、エネルギー代謝の補酵素の他、神経細胞間での情報を伝える神経伝達物質の合成に必要な栄養素です。不足すれば、ウェルニッケ脳症へ進行していきます。
ウェルニッケ脳症は、脳や脊髄などの中枢神経障害を招きます。急性期の症状として、眼球運動障害、歩行障害、意識障害の3つです。いずれも、医療機関の受診が必要となります。
ウェルニッケ脳症が慢性期になると、コルサコフ症候群と名前が変わります。コルサコフ症候群の症状は、健忘、作話、見当識障害などです。記憶力が低下して新しい記憶ほど覚えておけない前向性健忘症状と、病気になる前の古い記憶を失っている逆行性健忘症状があります。こうした曖昧な記憶のつじつまを合わせるために、記憶を作りかえてしまいます。さらに、現在の季節、日時、年度、自分が誰なのかも分からなくなります。
コルサコフ症候群は、アルコール性認知症のひとつです。
治療方法
萎縮した脳を回復させることはできませんが、禁酒、リハビリ、生活習慣の改善で、進行を抑え、日常生活を不自由なく送れるようにまでになれます。医療機関で経口ビタミン(ビタミンB2、B6、B12、葉酸)を投与し、ディケアやディサービスを利用して長期間のリハビリを行います。バランスの良い食事と良質な睡眠、規則正しい生活を心がけ、お酒は完全に止めます。
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