今年から認知症の薬が増えた

2011年から2020年までの認知症の薬の経緯

この記事を最初に書いたのは2011年で、現在改変している最中です。2011年に当記事で紹介した薬の数から、認知症の薬は一つも増えていません。先行して承認されたアリセプトに加え、レミニール、イクセロンパッチ・リバスタッチ、メマリーの4種類です。これらの薬はいずれも、認知症の症状を遅らせられるものの、認知症そのものを治す効果のあるものではありません。

米国でも同様で、1998年から2017年までに開発された認知症関連の治療薬で、実際に米食品医療品局（FDA)の承認を得られたのはわずか4種類です。承認に至らなかったのは146種類。146種類のうち、根治をめざすものは約4割の50件超ですが活用されていません。

今回紹介するアデュカムマムは、昨年2019年に国際学会で、認知症に効果があると発表された薬です。アデュカヌマブは一度、有効性が疑われて治験の中止を追い込まれています。再度、2020年の初めに米国で申請を行い、最短で2021年にも発売する見込みです。

認知症の薬を取り巻く状況について詳細します。

認知症の根治治療の開発が進まない

認知症の患者は世界で約5千万人、日本では約500万人います。その7割がアルツハイマー病で、脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積し、アミロイドβの変異により神経細胞の破壊が行われいきます。

現在承認されている薬は、神経伝達物質の分解を妨げて、神経の働きを活発にさせる作用のあるものです。根本治療薬として、アミロイドβの蓄積を防いだり除去したりして進行をおさえるものが開発されましたが、未だに承認に至っていません。
治験中に期待した効果が得られなかったり、薬を飲んだ方が認知機能が低下したり、脳に浮腫が起きるなどの副作用が見られたためです。

開発が進まない理由を、国立長寿医療研究センターの柳沢勝彦・研究所長は、脳内でアミロイドβがたまり始めてから、症状が出るまでの期間が長すぎるためとあげますす。「神経細胞が壊れてから、蓄積したアミロイドβを取り除く薬を使っても遅いと分かってきた」と話しています。

アデュカヌマブについて

アデュカヌマブは、米バイオジェンとエーザイによって共同開発された薬です。脳内に蓄積したアミロイドβを取り除く効果があります。この効果の有効性を評価することは難しいとされ、一度は治験の中止に迫られましたが、高用量を投与することでデータの有効性を明らかにしました。

ただし、バイオ医薬品であるために製造原価が高額になる弱点もあります。日本で保険適用される可能性は低く、海外でも低所得者・高齢者向けの医療保険でまかなうのは難しい価格帯になると予想されています。

アデュカヌマブによってアルツハイマーの発症を遅らせることで、アデュカヌマブの薬代に見合った、他の治療費と社会保障費の削減になるのかどうかが、今後の課題になりそうです。

2011年に書いた当記事

2011年に新薬が増えた時の当記事を、少し残しておきます。

2011年に認可された薬は、アルツハイマー型認知症専用

今までは、アルツハイマー型認知症の薬は、たった1種類、1999年に発売されたアリセプト（一般名：ドネベジル、エーザイ）しかありませんでした。12年ぶりに新薬が承認されたと、画期的なニュースとして報道されます。

2011年に認可された薬は、メマリー，レミニール，イクセロンパッチ・リバスタッチですが、いずれもアルツハイマー用のものです。

レミニール，イクセロンパッチ・リバスタッチ

レミニール，イクセロンパッチ・リバスタッチは、主に脳の中で衰えている脳の神経細胞を活性化させる作用がありますが、アルツハイマーの原因となっているアミロイドβタンパク質蓄積を抑制するものではありません。働きとしては、以前よりあったアリセプトと、似ていると言われています。

アミロイドβがアルツハイマーの引き金となり、この物質を蓄積させない方法は、現在のところ、生活習慣の改善で対応できると報道されています。つまり、薬ではまだまだなのでしょう？

メマリー

メマリーは、細胞の興奮性を抑制するための薬で、上記3種の薬と併用して使われています。

『認知症の困った』は、側近のことを忘れる、状況判断できないといった脳の能力が衰えることに加えて、暴力的な行動や徘徊、抑うつ、幻覚といった精神的な異変状態にも陥ります。こうした精神的な異変状態を、BPSD（周辺症状）と呼んでいます。

メマリーを使用することで、家族でも分かるほどの改善が見られたと報告を読みました。国際アルツハイマー病カンファレンス AAIC 2011では、メマリーは、妄想、興奮・攻撃性、易刺激性、情緒不安定な状態などのBPSDに対して効果が高いと発表されています。