健康寿命に不安になった時支えてくれる住まい
介護が必要ではないけれど、日常生活にやや不安がある、もし万が一何かあった場合に対応をしてくれる人が欲しいといったニーズで、作られたのがサービス付き高齢者住宅(以降「サ高住」と記す)です。当初は厚生年金受給者の比較的裕福な方向けで、入所の際は一時金が必要なところが大半となっています。
ところが昨今、高齢者が増え介護度の高い入居者も増えてきました。介護サービスに期待して入居したものの、人員体制が異なるために期待に沿えない現実に直面しトラブルが起きています。入居者側も不満でしょうが、施設側もやむを得ず介護に人員を割かなければなりません。
加えて廃業に追い込まれるサ高住も増え、入居者は行き場に困るケースも増えてきました。
「サ高住とは何?」を知りトラブルの原因を探り、良いサ高住を見極める方法について記載しました。
サ高住の基準
サ高住は、2011年の改正高齢者住まい法で創設されます。バリアフリー構造に加え、安否確認と生活相談が必須のサービスです。入居資格は60歳以上か、要介護認定を受けた方60歳未満の方です。
一般のマンションのように個室で居室にキッチンを供えているところもあり、建物内の食堂で食事もとれるようになっています。
具体的には次のような基準で運営されています。
居住面積
居住面積は原則25平方メートル以上ですが、共用分が確保されている場合は18平方メートル以上でも構いません。高齢者住宅協会のよると、19平方メートル以上20平方メートル未満が、63.6%を占めています。
安否確認と生活相談
所管する国土交通省と厚生労働省の省令で、介護福祉士ら有資格者が日中常駐することや、居住部分への訪問など毎日1回以上することが、サ高住の事業者に義務付けられています。
生活相談は安否確認のために常駐する有資格者が、随時対応することが義務となっています。
介護保険サービスの利用
高齢者住宅は、「特定施設入居者生活介護(以降、特定施設と記す)」と、「特定施設対象外」があります。特定施設は、介護が必要な人のための施設で、施設側が主体となって介護サービスを用意してくれます。有料老人ホームなどで、「介護付き」と書かれているのが特定施設です。
特定施設は介護費用が定額なために、身体状況に応じて費用が増加したり減少したりすることがありません。(※介護度に応じて費用は変わります。)逆に介護度が低い高齢者にとっては、必要がない介護に毎月料金を支払わなければならないといった不満もでてきます。
サ高住の多くは、特定施設ではないために、介護サービスが必要な場合は自分で探して、新たに他の事業者と契約を結ぶ必要があります。但し、多くのサ高住は併設するディサービスなどがあり、入居すると暗黙の了解でそちらを利用するようになる場合も少なからずです。
自分に合った介護サービスが選べるというメリットはありますが、施設内で24時間体制の手厚い介護を望むのは難しいのが普通です。
また、特定施設と大きな差となるのは、スタッフ人員体制です。特養や介護付き老人ホームの場合、要介護の高齢者3人対し介護福祉士などを1配置し夜勤も対応します。サ高住では日中はヘルパーが常駐し、夜勤は置かないで緊急通報対応する運用するところもあります。
生活支援サービス
特設施設であれば、食事の提供、清掃や洗濯、そのほか家事援助は、施設側が提供することになっていますが、サ高住では入居者が、サービスの提供の有無を選択できます。この場合、費用は別枠設定されています。
入居者の自由度
介護付きと称される特定施設の場合、入居者は自由に外出したり外泊をすることができません。事前に施設に申し出て許可を得てからとなります。許可申請には、外出先や同伴者などの詳細記述を求められます。
比較的自立度の高いお年寄りが、老人ホームへの入居を拒む大きな理由は、自由に施設の出入りができないことです。例えば、外食をしたいとか好きなアーティストのコンサートに出かけたいといったことは、普通にできます。サ高住のニーズはここにあるように思われます。
サ高住はあくまで住居ですので、外出や外泊、友人や家族が室内で宿泊することも可能です。飲食を居室に持ち込んで、お酒を飲むこともできるようですよ。
安否確認をしてもらいながら、自由に暮らせるというのがサ高住の大きなウリです。
サ高住の現状
政府は2021年度から、全国で約26万人の高齢者が暮らすサ高住に対する監視を強化する方針を固めました。突然の廃業などで高齢者が住まいを失うケースが、相次いでいるためです。
退居者が多く、経営が安定していない施設を利用者が見分けられれば、入居後他の施設へ転居せざるを得ないといったトラブルも避けられます。
主な政策として、全施設に入居・退所者数や退居理由などの公開を義務付けます。自社の介護サービスのみを過剰に使わせて、家賃を安く抑える可能性が高い施設を補助金の対象を外します。月額費用が安いからと飛びついたものの、逆に割高だったというケースを避けるためです。
もし、サ高住への入居を検討するなら、専用ホームページ『サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム』の情報を参考にします。短期間で退居者が多いとか、退居理由に不審な点が多いといった施設は当然避けなければなりません。
入居者が確保できずに廃業
サ高住の問題点として、入居者が確保できないことがあります。三井住友銀行が「サービス付き高齢者向け住宅市場の動向」について発表した資料にはこうあります。
『サ高住の入居率をみれば、ケアマネージャーや病院などから入居者の紹介を受けるための関係構築や、入居者の様々な介護度に応じた受け入れ体制の整備などに一定の期間を要するために、開設後2年程度は8割に届かない施設が多くみられます。しかしながら、開業後2年以上経緯した施設の入居率は8割超と高水準で推移しています。』
実際、経営計画が狂い入居者が確保できずに、廃業するサ高住もあります。国土交通省の調査によるとサ高住の廃業件数は16年度は30施設でしたが、19年度は過去最多の53施設と増加傾向にあるのです。
介護の必要な入居者が増える
元々、比較的元気な高齢者の入居を想定していたサ高住が、現在では特養に入れない人の受け皿になってきています。特養に入れない待機者のうち、要介護3以上の人や約29万2000人(19年4月)もいます。厚労省の委託調査で、サ高住の入居者は要介護1が23%で、要介護3以上の人が32.2%もいると報告していました。
特定施設のような人員体制が整っていないサ高住に、要介護3以上の人が3割いるのは相当な負担であるといえます。
サ高住の正式名称である「サービス付き高齢者向け住宅」のサービスが、介護に読み替えて誤解しているようです。入居したもののやがて、サ高住では受け入れが困難と判断され退居せざるを得ないこともあるそうです。
介護サービスの囲い込み
サ高住は自社で介護サービスを運営しているところも多く、安い家賃で入居者を集め、自社のデイサービスなどの介護サービスを入居者に利用させて、家賃と介護報酬で経営の安定化を図っているところもあります。
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