運転なしでも生活の質を変えない方法を見つける
高齢の親は子供と違って、プライドがあり、長年行ってきた生活様式や考え方を簡単に変えることはできません。地方であれば、車は生活必需品、地方でなくても、レジャーや習い事など生きがいのため、なくてはならないという方もいます。
それを今更、免許返納とはねぇーと、多くの高齢者は言いたいわけです。
国立長寿医療センターの調査によれば、65歳以上の高齢者が運転をやめると、運転を続けている人の約7.8倍も要介護になるリスクが高くなるといいます。運転をやめる方の中には、既に病気や障害がある方もいるので、この比較は正確ではありません。心身ともに健康な状態でありながら、運転をやめた人と比較するべきです。いずれにしろ、ドライバーにとっては、車の運転は楽しいということですね。
子供が、昨今の高齢者による交通事故を取り上げて、親に免許返納を迫ったところで、二つ返事で応じないでしょう。運転免許返納に限らず、こうした親の生活に踏み込んで、立ち入ったことまで説得せざるを得ないのが、子供の厄介な立場です。まだ、若い気持ちの親なら、『お前に何がわかる!!』と喧嘩にもなるでしょう。
本当に親の運転は心配なのか?
悲しい交通事故のニュースばかりで、不安で一杯になり、親の運転技能を正確に把握しないで、やみくもに免許返納を迫るのは良くありません。NPO法人「高齢者安全運転支援研究所」が、鳥取大学医学部 浦和克哉教授の監修をもとに作成した『運転時認知障害早期発見チェックリスト』があります。親に免許返納を切り出す時か、否かの判断材料になります。
このリストで5項目以上チェックが入れば、認知機能の病的障害を念頭に専門機関で診てもらうなどの目安とします。
なかなか、きわどい線をついているので、いくつか抜粋してみます。
- 車のキーや免許証などを探し回ることがある。
- スーパーなどの駐車場で自分の車を止めた位置がわからなくなることがある。
- 運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。
- 運転中のバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。
- アクセルとブレーキを間違えることがある。
- 曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。
- 右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。
- 高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。
- 合流が怖く(苦手に)なった。
- 駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。
運転免許返納の説得の手立ては4つ
説得の手立ては、【車の所有がいかにお金がかかるか】、【運転免許返納後のお得感】、【ドライブレコーダーによる運転技能の再確認】、【他の移動手段の検討】などがあります。『まさか』が起こる前に、ここは子供がひと汗もふた汗もかきたいところです。
車の所有にかかる費用
【健康をとり戻す応援サイト OGスマイル】で、車を所有している場合の1年間の維持費が算出されていました。次の表のうち、実際には2年分まとめて支払うものは1年分として試算、ガソリン代は152円/L、燃費は普通自動車12Km/L、軽自動車15Km/Lとして計算しています。他、車種や加入する保険、駐車場代、走行距離によって費用は変動します。
普通自動車 (コンパクトカー) | 軽自動車 | |
---|---|---|
自動車税 | 34,500円 | 10,800円 |
重量税 | 16,400円 | 12,300円 |
車検 | 30,000円 | 25,000円 |
自賠責保険 | 12,915円 | 12,535円 |
自動車任意保険 | 75,000円 | 70,000円 |
点検費用 | 18,000円 | 15,000円 |
駐車場代 | 120,000円 | 120,000円 |
ガソリン代 | 2,533円 | 2,026円 |
合計 | 309,348円 | 267,661円 |
ちなみに、我が家の隣町の病院までのタクシー料金が1760円で、往復3520円です。普通自動車の維持費309,348円を全てで、何日分のタクシーが使えるかと換算すれば、約88日です。88日を12カ月で割ると7日で、おおよそ週2の外出が可能です。
しかも、高齢者の場合、市町村によっては、バスやタクシーの割引チケットが発行されています。そんな制度を利用すれば、週2以上の外出も可能です。
また、上記の表には反映されていませんが、都心の場合の駐車場代は、おおよそひと月 3万円で、年間36万に膨らみます。逆に、地方は駐車場代はかかりませんが、移動距離が長くガソリン代が膨れていきます。あくまで時と場合によりけりですが、車の所有にかかる費用は馬鹿になりません。
運転免許返納し車を売却すれば、生活に余裕が生まれることが説得材料になります。
運転免許返納後のお得感
運転免許返納後に、1000円の手数料を支払って受け取る『運転経歴証明書』で、様々な団体や企業が特典を用意しています。交通費や宿泊施設、買い物などの割引サービスなどがあります。具体的には、バスや鉄道料金が半額になる、タクシー料金が10%割引になる、スーパーでの買い物の配送サービスの割引、銀行の預金金利の増加、メガネや補聴器の割引、三越・伊勢丹・高島屋での買い物が無料配送になるなどです。
なお、運転経歴証明書は、本人の写真が張り付けられ、運転免許所と同様に公式な本人確認の書類として利用できます。
特典の詳細は、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟団体の一覧とともに、その内容が明記されています。警視庁のホームページにありますのでご覧になってみてください。
運転技能の再確認
ドライブレコーダーをつけて、親と一緒に運転技能を再確認する方法があります。ドライブレコーダーがない場合は、一緒に車に乗ります。
親子でドライブレコーダーに映った映像を見ながら、気が付いた点をプライドを傷つけないように指摘していきます。一時停止を行っているか?、車間距離は適切か?、信号無視していないか?など道路交通法に加え、センターラインを越えていないか?車庫入れに失敗していないか?通い慣れない道で不安な様子はないか?などもチェックしたいところです。さらに、狭い道での対向車とのすれ違いのスピードや、歩行者らを認識する速さ、ルートの選択などについても確認が必要でしょう。
こうしたことを確認しながら、事故を防ぐために気をつけるべき点などを話し合えば、高齢者も自分の運転のどこに危険があるか気が付きます。親も自然に自身の身体機能の衰えを、自覚してくれるに違いありません。
車を使う用途を他の移動手段に代える
車を使う用途を他のサービスで補う方法がないか、一つづつ解決する方法もあります。
買い物やグルメは、ネット通販を利用します。病院や、コンサート・お芝居・美術鑑賞など趣味は、バスやタクシー。習い事は、パソコンを使ったオンライン学習にできないかを調べます。
用途を問わず月1回は、子供が送迎することと決めて、自分が運転しなくても生活の質が保てると安心してもらうのも良いと考えます。徐々に、免許返納に踏み切ってもらうように道筋をととのえていくのです。
子供の声に耳を貸さない時
上述のような手立てをしても、一向に親が免許返納を行わない場合は、第三者の力を借りてみます。
医師やケアマネージャーに困った状況を説明し、説得してもらいます。
専門機関に出向いて、新たな解決方法を探ることもできます。警察署や運転免許センターには、『運転適性相談窓口』が設置されていますし、地域包括支援センターで移動や外出支援のサービスについて、相談にのってくれるそうです。
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