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認知症に車の運転をやめさせる歯止めは、法律だけでいいの?

運転できるできないの判断は誰がする?

今年3月12日に施行された改正道路交通法の問題点が、少しづつ浮き彫りにされてきています。新聞やネットの情報に目を通してみれば、運転に不向きである人が運転している人が多すぎます。

本来ならば本人や家族が病気の危険性を認識して、車の運転をやめるべき(やめさせるべき)ですが、それが現実とならないのは、認知症であるところの悲劇です。

認知症は急に、自分の名前や居場所が分からなくなるのではなく、判断力が低下して自分の体の状態などが、徐々に分からなくなっていきます。

判断力が低下する前であれば、『行き慣れた道順で迷うようになった』とか、『車線からはみ出してしまう』とか、『目的地を忘れた』といったことから、おかしいと気がつきます。認知症という病気が周知された今なら、尚のこと。周囲の人が注意を促せば、交通事故を、引き起こす危険性が容易に理解できます。 車の事故

しかし、この軽度の段階で車の運転を諦めれなければ、次は家族が説得するしかありません。車を運転する方は、明確な目的があるので、容易に説得に応じることがありません。或いは、車がなければ生活できない、切実な事情もあるかもしれません。

認知症が進めば進むほど、頑固になります。周囲の状況判断ができなくなり、人の意見にも耳を貸さなくなり、運転をやめさせることができにくくなっていくのです。

さらに時間が経てば、第三者の誰かに頼らざるを得なくなっていきます。つまり、法律です。命の危険性がある車の運転を、続けるか否かの判断を、法律の力で解決せざるを得なくなりました。

何か、変だと思うのは私だけでしょうか?

自主判断だけでは道路の安全は守れない

最初は、改正道路交通法が施行される以前は、自主判断に任されていました。

これからは、認知症と診断されれば、運転免許取り消しや停止処分になります。

2016年度までは、75歳以上の人は3年に一度の運転免許更新時に、記憶力や判断力をみる認知機能検査を受けていました。この検査の結果、認知症の恐れがあっても、信号無視などの交通違反がなければ、医療機関の受診をする必要はありませんでした。

認知症の恐れがあると判定後も、運転免許は更新されて、交通違反があった場合のみ診断する義務を負っていたのです。

2016年に認知症の恐れがあると、判定を受けた人は1650人です。今年9月に読売新聞が行った、全国の警察本部のアンケート結果によれば、75歳以上の認知症の恐れがありとされたドライバーは、推定6万5千人だそうです。改正道路交通法によって、認知症の判定基準が明確になり、検査を行う体制も整ったとはいえ、その差なんと、40倍です。

『認知症の恐れがあり』と判定されたにもかかわらず、運転免許更新を希望するなら、医療機関を受診する義務があります。また、信号無視や逆走などした場合も、認知症機能検査を受け、認知症の恐れがあれば医療機関の受診義務を負います。

この段階で車の運転をやめる決心をして、警察に運転免許証の自主返納をしてくれれば、今のような問題は起きませんでした。

改正道路交通法の問題点

受診する医療機関は、公安委員会が指定する専門医か、または、自らが選んだかかりつけ医の2つから選べます。公安委員会が指定する専門医で検査を受ける場合は、費用は公費負担で、かかりつけ医を選んだ場合は、費用は自己負担となります。

現在問題になっているのは、認知症を診断する医療機関が足りないことと、診断にあたっての基準や費用がまちまちであること、医師側からの懸念材料などです。

また、改正道路交通法は、75歳以上だけをターゲットにしていますが、認知症は75歳未満でも発症します。若年性認知症に対するケアが、十分でないことも問題として上がってきています。

臨時適性検査などを行う医療機関の問題点

警視庁は、臨時適性検査を行う医療機関を、都道府県公安委員会が指定する専門医と、かかりつけの専門医に決めました。2つの組織の取り扱いは違うのに、警視庁の文章では、区別をつけていません。一方は費用はほとんどかからず、一方は自己負担であることから、医療機関側も受信者にとっても、問題点は違っているのにです。

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指定医では、検査を行う医療機関不足と医師不足

都道府県公安委員会が指定する専門医と思われる、認知症疾患医療センターの指定病院では受信者が増え、予約待ちの時間が長期化しているそうです。中でも、新規患者の予約待ち期間が1カ月か、それ以上となっています。専門医の不足も、ほとんどの病院が懸念材料として上げています。

警視庁では、このような専門医に負担が集中する懸念に対して、日本医師会と連携して、都道府県警察が認知症診断に協力してもらえる医師リストを作成しています。つまり、かかりつけ医の数を増やそうとしているようです。

ひとつ疑問なのですが、都道府県公安委員会が指定する専門医のリストを探しましたが、見つかりません。混雑することを懸念して、一般公開されていないのでしょうか?なんか、上述の医師リストを作成する前にこっちだと思うんですけど、どうかな?

かかりつけ医では、診断方法と費用がまちまち

かかりつけ医は、警察庁に提出する認知症の診断書を、書かなくてはなりません。しかし、認知症の診断方法は、病院や医師の考え方によって異なり、通院日数、費用もまちまちだそうです。

読売新聞の医療版『ヨミドクター』によれば、お多福もの忘れクリニック(水戸市)が公開した診療費は、以下の通りです。慢性硬膜下血腫やアルツハイマー型認知症以外の原因を探るために、CTやMRIなどの画像検査も行います。

こちらのクリニックでは、免許更新のための全体の診療費は、約8000円だそうです。 病院によっては、初診日に検査できずに数日通うこともあり、診断書を検査日以降に渡されることもあります。病院選びは、要注意です。

  • 問診やチェックテスト 1000~3000円程度
  • 脳の委縮や他の病気の有無の検査
    ●CT 1500~2000円程度
    ●MRI 1500~3000円程度
  • 脳の血流を見る検査
    ●SPECT 8000~1万円程度
  • 血液検査 1000円程度
  • 診断書料 5000円程度
かかりつけ医の認知症運転判断ソフトが開発

こうしたかかりつけ医が認知症を診断するために、パソコンソフトが開発されています。大分市の博愛病院理事長の釘宮誠司医師らによって、作られました。

専門医でなくても認知症の診断がしやすいように、約70問の問診からなる手引書を作成。認知機能と運転関係に詳しい佐賀大の堀川悦夫教授(認知神経心理学)の監修による、運転能力が判断できるソフトを開発しています。さらに、運転機能に関係する約40問の回答から、運転の可否が診断できるようにしています。

釘宮医師によれば、運転能力のない人を早期に見つけて事故減少につなげ、同時に、『運転する権利』を不必要に奪ってしまわないようにしたいそうです。さらに、医師の判断の手助けになればと、語っています。

認知症の専門医だけで、対処することが難しい問題を、こうした試みで診断能力の向上や診断の標準化になっていくことが期待されますね。

医師側の懸念材料もある

私が一番同調したのは、医師側の懸念です。認知症の診断は非常に分かりにくいうえに、大切な運転免許がかかっています。医師の診断に反発したり、不信を持つ人も少なからずいるはずです。逆に、医師が認知症ではないと診断したのにもかかわらず、認知症を疑うような事故を起こした際の責任問題も懸念されます。

警察庁の文章も読みましたが、こうしたことは警察庁側に責任があるという内容でした。しかし、文字通り、人の心理はいかないところが、世の常ですし、難題なところであります。

若年性認知症の運転免許更新対策は進んでいない

高齢者の交通事故のニュースに並んで、無謀な若者の運転で命が奪われるニュースもあります。先日もドライブインで注意した家族連れの車を、高速道路で進路妨害し、挙げ句の果てに、死なせてしまった事件が記憶に残っています。

年齢に関係なく信号無視や逆走した場合も、車の運転適性検査と医師の診察を義務付けることも検討してほしいものです。

運転免許更新時に、認知症のチェックを行うのは75歳以上です。75歳以下の若年性認知症の人は、チェックを行う機会がありません。自主的に運転免許証を返納するか、医師の診断をもとに免許取り消し処分を受けたりするしか方法がありません。

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