真実は明確でない、一概に言えないと言うのが現在のところ
ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院より、『やせすぎこそが認知症発症の危険性をはらんでいるとの報告をおこなった。』という発表がされました。2015年4月9日に、医学専門誌『The Lancet Diabetes & Endocrinology』の研究論文に掲載されています。
この流れは、2005年頃に言われていた過度な食事制限は、脳の栄養失調を招くという説の巻き戻しのように感じられます。現在の流れは、逆です。
認知症になりやすいのは痩せている方か肥満者か?
一方、2014年11月18日、米国ワシントンD.C.で開かれた「北米神経科学学会」の記者会見では、逆の説が発表されています。肥満した人の海馬(大脳辺縁系の一部=記憶を司る)の収縮率が、アルツハイマー病に匹敵した認知症を、引き起こす可能性が高いというものです。
ただ、ロンドン大学は20年間にわたり約200万人の数値で、ワシントンD.Cは60代のボランティア400人の脳を調査した数値なので、圧倒的にロンドン大学の方が信憑性が高そうです。厄介なところです。
従来の肥満が認知症と繋がっているという説は、コレステロールが高くなる事で動脈硬化を引き起こし、脳血管性認知症になるとか、高脂血症や糖尿病からアルツハイマーになるとかといったことからです。米国ワシントンD.C.の研究で、肥満と海馬の委縮のメカニズムはまだ、解明されていません。
肥満がコレステロール値を高めるという説について
肥満の体脂肪は、中性脂肪の増加になると考えられています。中性脂肪が増加すると、善玉コレステロール(HDL)が減少し、悪玉コレステロール(LDL)が増加することがわかっています。
増えすぎた悪玉コレステロールは多くのメディアで放送されているとおり、血栓を作りやすく脳梗塞や心筋梗塞などの原因とされていて、高血圧や高脂血症、糖尿病などとも少なからず関係がありです。
ただ、太っていないのに悪玉コレステロールが高い人もいるし、相当な肥満でもコレステロールの値が正常な方もいて、一概には言えないのです。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール
そもそも悪玉コレステロールとは何なのでしょうか?相反する善玉コレステロールとの働きが相反するために、便宜上、悪玉という名前がつけられているだけです。悪玉コレステロールは、人間の体内に運ばれ生命活動に役立てられます。細胞膜、ホルモンの生成、胆汁酸の生成には、なくてはならないものです。少なすぎると、うつになったり、ガンの発症率が高くなると言われています。
悪玉コレステロールが、人間の各組織に栄養を与えるため配分していくのに対して、善玉コレステロール(HDL)は血管内壁に摂り込まれたコレステロールを回収する働きをします。回収する、善玉コレステロールが少なくなると、悪玉が増える一方で血栓や動脈硬化につながるというわけです。
悪玉コレステロールが増える理由
もう一度、整理してみます。悪玉コレステロールはなぜ増えるのでしょうか?
肥満と悪玉コレステロールの関係
悪玉コレステロールは、約70%は肝臓で合成され他30%は食事より補っています。中性脂肪を抱えた肥満者は、悪玉コレステロールも多いと、現在思われています。
食事とコレステロールの関係
また、食事でコレステロール値を上げる食べ物を摂取すると、体内で生成するコレステロールは調節され、さらに悪玉コレステロール値は上がるとされてきていました。そのため、悪玉コレステロール値を上げる食品等が、紹介され注意喚起されています。
しかし、2015年2月、米政府の食生活ガイドライン諮問委員会より「コレステロールの摂取は健康に影響しない」との見解が示されています。日本においても2015年に、厚生労働省のホームページから、食事におけるコレステロールの摂取量に関して上限値が撤廃されました。
今わかっている悪玉コレステロールを増やす原因
悪玉コレステロールを増やす確かな原因は、喫煙、飲酒、酸化した油、ストレスなどで、細胞にダメージを与える現象が起きた時です。これらの負の要因が体内に入り込んだ時、抗酸化力の高いコレステロールが血中に入り込み、ダメージを受けた箇所の修復にあたるのです。
悪玉コレステロールを増やさない方法は、ストレスを抱え込まない事、細胞がダメージを受けることから守ってくれる、抗酸化力のある食べ物を食べることです。
かつてより認知症に良いと言われているビタミンCやビタミンEをはじめ、βカロテン、チョコレートやワインに含まれているポリフェノール、お茶に多いカテキンなどが該当します。βカロチンが多い食べ物と言えば、かぼちゃ。
多くのメディアは、今回アメリカと日本の厚労省の動きを知りながらも、肥満も食事も少なからず、悪玉コレステロールと関係ありと結論づけています。私も少なからずあるとは思いますが、コレステロール不足はうつを引き起こし、認知症にも少なからず関係はあるので、過度な食事制限も逆効果となるのです。これは、最初に書いた痩せすぎのために、認知症になるという説と繋がります。
善玉コレステロールを増やす
悪玉コレステロールばかりに目をやるのではなく、回収を行う善玉コレステロールを増やす方に目を向ける方法もあります。
よく言われている有酸素運動であるウォーキングは、善玉コレステロールを増やしてくれます。認知症の予防に良いと言われているインターバル速歩は、特に効果を倍増させます。休日は隣町まで自転車で買い物へ行くとか、スポーツジムに通うとかといった生活習慣を組みこむのも良い方法です。
食べ物では、青背魚に含まれるDHA,EPAは、善玉コレステロールを増やしてくれます。しかも、悪玉コレステロールや中性脂肪も減らしてくれる働きもあるということです。
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