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日本の育児・介護休業法が、在宅介護者支援の一つになるの?

平成29年1月1日からの介護休業法の改正で日本の実情を知る

このところ介護者支援の記事を、書いています。丁度良いタイミングで、先日、読売新聞に介護者の残業免除の記事が掲載されました。

介護者の残業免除は、来年(平成29年)に改正される、育児・介護休業法のひとつです。残業免除以外の他の改正内容と、『そもそも介護休業法って何』というところから、日本の介護者支援のあり方について考えてみます。(参考資料 改正育児・介護休業法等について階段を駆け上がるサラリーマン

育児・介護休業法って何?

育児・介護休業法の始まりは、何でしょう。

1972年に施行された『育児休業等育児に関する便宜の供与』が、事業主の努力目標として規定されたことに始まります。その後、女性も男性と同じ、働く機会を持つべきという風潮が高まりましたが、名ばかりでほとんど機能されないまま、年が過ぎていきました。

次第に、女性の社会進出が当たり前になり、結婚・出産をしても働き続ける環境を切望する女性も増えました。そんな折、1992年に育児休業が法律となり、『育児休業法』として同年4月1日により施行されます。

やがて、少子高齢化が進み、介護に携わる方が企業の中核となって、労働力不足が懸念されます。介護者が離職しないで、介護できる仕組みへの要求が高まります。1995年10月1日より、介護休業と育児休業が一緒になって、『育児・介護休業法』が施行されました。

事業主の義務となっていること

具体的に、働く介護者を守るために、事業主の義務となっている事項は、3つです。

  • 短時間勤務制度
    短時間勤務(1日6時間)の勤務が可能
  • 所定外労働制限
    残業が免除される制度(今回の改正)
  • 介護休暇
    介護の必要がある日について仕事を休める制度

対象となる社員

原則として、対象家族の介護、その他の世話をする全ての男女従業員(日々雇用者を除く)が対象です。但し、勤続年数6ヶ月未満の従業員と、週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定がある場合には対象となりません。

今回の改正内容

当サイトは介護ブログなので、育児に関する改正内容は省きます。各改正内容毎に、『現行』、『改正内容』、『懸念される個人的な意見』の3点で、記述していきます。

介護休業の分割取得

現行

介護を必要とする家族が1人につき、通算93日まで原則1回に限り取得可能。

改正内容

介護を必要とする家族が1人につき、通算93日まで原則3回に限り取得可能。

(個人的な)懸念事項

医療技術が進歩したため、介護を10年以上継続している方もいます。短期間であれば、93日3回は、助かりますが、介護期間が長引いた場合には、通算93日しかとれないのは不安があります。

介護休業中は、ほとんどの会社は給与の支給は無いはずです。雇用契約は結ばれていますので、社会保険の支払い義務はあります。育児休業は社会保険が免除されますが、介護休業の場合は免除は認められていません。

給与が無であれば、雇用保険は0円です。一方、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、社員と会社の折半によって負担することになります。給与の支払いがないのに、これらの社会保険料は、各々の会社の判断に任されているはずです。

通常、休業中に会社が全額立て替えて、職場に復帰した後に清算する取り扱いが多いのです。休業中、給料がゼロですし復帰後はたまっている社会保険料を、会社に支払わなくてはならないために、経済的な負担は大きいことは言うまでもありません。

介護休暇の取得単位

現行

介護休暇について1日単位での取得

改正内容

半日単位での取得

(個人的な)懸案事項

介護を必要とする家族1人につき、1年で5日迄と決められています。

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介護者は、この介護休暇と、会社で貰える有給休暇を合わせて、介護のために使っていくと想像します。多くの会社は、介護休暇に限っては、無給であるはずです。とがめられずに、休みがとれる程度に考えていた方が、良さそうです。

厚生労働省による最新『就労条件総合調査』によると、有給付与日数は年平均18.5日と出しています。無給の介護休暇が5日と有給の18.5日を合わせて、23.5日が、年平均MAXで使える日数です。もし、これ以上休んでしまうと、ボーナスから引かれるとか査定にひびくなど、会社ごとに対応があるでしょう。

介護のために半日づつ休むとすると、一か月に何日休みをとることができるでしょうか?
23.5×2(半日なので倍)÷12カ月=3.91 一月に、約4日弱の時間がとれる計算になります。

遠距離介護の場合は、1日消化しますので2日弱、使える計算になります。介護の状況などより何とも言えませんが、頑張れば何とかといった数値なのでしょうかね。

介護のための所定労働時間の短縮措置等

現行

介護のために所定労働時間の短縮措置(下記の項目から選択)を、介護休業と通算して93日の範囲内で取得が可能。つまり、介護休業で半分使ってしまえば、残り半分の日数しか労働時間の短縮は認められないことになります。

  1. 短時間勤務制度
  2. フレックスタイム制度
  3. 始終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
  4. 所定外労働の免除
  5. 託児施設の設置運営など
改正内容

介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上利用可能となります。

(個人的な)懸案事項】

改正内容では、上限日数を探しましたが記述がありませんでしたので、個々の企業毎の労使間での取り決めに従うようです。

大手であればフレックスタイム制度の導入がされていますので、始終業時刻を変更させながら、介護サービスを利用することができそうです。しかし、現実はどうでしょう? 介護離職が増える一方です。

フレックスタイムの時間の幅を広げるなど、踏み込んだ提案をして欲しかったと感じます。例えば午後から出社して、深夜帰宅もフレックス制度の枠内とか、朝6時から出社して午後3時に帰宅するなどのパターンもありみたいなことです。

もともと、短時間勤務のために作られた法律なのに、フレックスタイムを持ちだすこと自体、不自然です。フレックスタイムは、総労働時間を変えないで、就業開始時間などを遅らせるシステムです。何故、短時間勤務の選択肢にフレックスタイムがあるのか? フレックスタイム制度を理由に、特別な対応をしない企業も多いのではないでしょうか。

ただ、介護休業93日とは別枠になったということは、評価するべきです。

介護のための所定外労働の免除

残業の免除のことを言います。

現行

とり決めなし。

改正内容

対象家族1人につき、介護終了まで利用できる残業が免除されます。

(個人的な)懸案事項

仕事に、残業があるのが普通と言うのが前提となっていて、なんと!日本的な法律なのかと呆れました。

本来、残業をしなければならないような時は、例外的な業務や緊急事態の対応であるべきで、その場合は、介護者であってもやらざるを得ない状況になるはずです。最初っから免除されることを前提にした残業って、日常的に残業が行われている日本だからなのではないでしょうかね。

介護休業給付金の給付率の引き上げ

介護休業給付金を事業主が申請することで、給付金が介護者に支払われます。支給額は、休業開始時賃金日額×支給日数×給付率となります。

現行

介護休業開始が平成28年7月以前の場合は、40%の給付率。

改正内容

介護休業開始が平成28年8月以降の場合は、67%の給付率。

(個人的な)懸案事項

給与が支払われない介護者への救済措置となります。ただ、介護給付期間の上限が93日と決められているので、介護給付期間も通算93日となります。 93日を超えた場合の補償がないことが、介護の難しい局面となります。

介護と育児は根本的に違うのに、育児休業と同じ考え方で介護休業を設定したことが、そもそも間違っているのではないかと考えます。育児のように、介護は期間を切ることが不可能なのに、そうせざるを得ない仕組みには、元々無理があるんですよね。

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