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若年性認知症の夫を介護するケアノート『明日はわが身』を読んだ

実際ケアした方の実のある情報が得られる

若年性認知症の夫を介護するケアノート、南田佐智恵さんの『明日はわが身』を読みました。南田さんは、作家である渡辺淳一の秘書であった方で、夫は飲食店経営を、成功させた実業家でした。恵まれた方の介護ケアは、一般の方の悩みとはずれているのではないかと、最初は考えました。しかし、幾分経済的に恵まれているとはいえ、深刻度は同じです。

この本は、単なる介護記録に留まらず、若年性認知症の介護で悩む方に向きあい、寄り添った情報を開示しています。南田さんご自身が、知らなかったために失敗した事を踏まえての生きた情報が満載です。車椅子の男性

若年性認知症と老年性認知症の違い

現役中のご主人が、認知症であることを受け入れる事ができない葛藤と、家族に心配をかけたくないと思い、隠し続けなくてはならない心情が伝わってきました。

南田さんが、最初に夫の異変に気が付いたのは、2005年夫が53歳の時ですが、病院で治療を開始したのは2008年11月です。この間、ご主人は、隠していたのですね。

言うまでもなく若年性認知症と老年性認知症では、取り巻く環境が異なります。一家の大黒柱であれば、家族の生活は困窮しますし、情報も相談窓口も少ないのです。既にリタイアしたお年寄りだったら、ショッキングではあるけれど、幾分の覚悟はあるはずです。若年性認知症となると、訳が違います。

老年性認知症と同じディケアやディサービスを、利用しようとしても、年齢がかけ離れたお年寄りに混じっては上手くいきません。家族は、どう介護して良いのか途方にくれます。

救済してくれる制度を教えてくれる人がいない

今でこそ介護保険を知らない人はいませんが、数年前までは、そうではありませんでした。他に、国が作った救済制度を知る方法も、救済制度を知っている人に、本人に見合う制度をアドバイスしてもらう方法も分かりません。

現在でも、介護者は、自分で調べなくちゃ何も分からないと考えている人は多いですね。

救済する制度はあったも、制度自体の認知度が低いのです。

国の制度

南田さんのご主人は、大脳基底核変性症という認知症とパーキンソン症を併せた病気で、10万人に2人という珍しい病気です。脳の前頭葉と頭頂葉が、萎縮されていきます。この大脳基底核変性症は、国が指定する難病の一つです。『特定疾患医療受給者証』の交付を受けられ、しかも、生計中心者であれば自己負担は大幅に援助されるはずでした。

しかし、南田さんの場合は、治療を受けて1年以上たってから、その事実を知ったと言います。 その間、いくつもの病院巡りをして、多くの医師と接していながら、医療制度や介護保険制度の説明をしてくれた医師は、誰もいなかったのです。

『特定疾患医療受給者証』について、教えてくれた人は医師ではなく、処方箋薬局の薬剤師でした。

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この本の最後に、若年性認知症が利用できる国の制度について、まとめられています。介護保険以外に、身体障害者手帳、精神障害者福祉手帳・・などについて書かれていて、介護者がひとつづつ、該当するかどうかを、検討することできるようになっています。

こうした制度を知りえなかった南田さんは、2年半もの間一人で夫を介護し、介護詐欺にも引っ掛かります。自殺まで考えて、神様にすがろうと教会に行った際、神父さんに『教会でなく区役所に行ってください』と言われたこともあるそうです。それでも、その意味が理解できなかったのですね。

その後、やっと親切な方に介護保険の申請の仕方を教わり、申請したら介護4です。認知症の介護4なんて、ほとんど目が離せない状態なのですが、随分と苦しかったと察します。

民間の制度

若年性認知症になると、近い将来、職を失い生活費に困ります。少しでも、金銭面で助けて欲しいというのが、家族の本音となります。

民間の生命保険の高度障害保険金の中で、精神障害などの項目で該当すれば、支払いが可能になると書かれていました。とはいっても、生命保険会社ごとに、支払基準は異なり、保障対象にならないこともあるそうです。南田さんは運が良かったために支払われたとありますが、生命保険という救済処置を知っているのと知らないのとでは、違ってくるはずです。

現状の介護保険の制度は、老年性認知症向け

若年性認知症になる方は、厚生労働省の発表によれば、推計3万8000人、平均発症年齢は51.3歳、男性が6割です。いずれにしても、老年性認知症とは比較にならないほど数が少ないために、介護保険が使えても上手に活用しきれない事が悩みです。

認知症に良いと言われているディケアやディサービスも、年代が異なるために話が合わないし、第一プライドが許さないために止めてしまう方がほとんどです。介護士にしても、自分より年上の人に面倒を見てもらうのは嫌、女性に診てもらうのは恥ずかしいなどの感情があって難しくなります。

施設選び、介護士選びだけでも、神経を使わなくてはならないのが、若年性認知症なのです。

南田さんの施設探し、介護士探しの中で、こうしたご主人の気持ちが事細かく書きながら、奮闘する様子が書かれていました。

その他、利用できる制度

後半は、若年性認知症の方や家族を助けるであろう、無料相談窓口や制度、施設等が紹介されています。また、南田さんの介護方法なども紹介されていますので、参考になるはずです。

現在、南田さんは一度は施設に預けた夫を呼び戻し、介護を続けながら、ディサービスを開業していると言います。

介護の方法は色々あるのは当然ですが、選択するための情報は沢山あった方が良いに決まっています。この本に書いてある、施設や電話相談を手掛かりにすれば、良い情報は見つるかもしれません。

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