家族介護者の介護離職率への対応は、現実的なのか?

介護支援が育児支援のようにうまくいかない理由

2010年度に、離職した総数(農林業は除く)と、介護を理由に離職した人数(今後介護離職者数と記載)が、総務省と厚生労働省から発表になっています。

同一年度において二つの省の数値が異なるのは、調査対象となる労働者の違いによるものです。

調査省庁 全体の離職者数 介護離職者数
総務省 (労働力調査) 563万人 8万人(離職者全体1.4%)
厚生労働省 (雇用動向調査) 643万人 5万人(同0.8%)

サラリーマンの駅構内を歩く姿

今のところ介護離職者は、全体の離職者の1%

いずれにしても、2010年度は離職者のうち介護離職者は1%程度です。ただ、この数値は、今後2020年代前半頃より大幅に増加すると言われています。

その背景には、団塊世代が75歳に到達し要介護者が急増すること、その子供世代である団塊ジュニアは未婚率が高く、兄弟姉妹の数も少ないため、家族内介護の分担が難しくなっていることにあります。

これからの介護離職者は年間14万人と予想

2012年8月7日の日本経済新聞に載った、介護離職者数は年間14万人と発表されています。先の2010年の数値と比較すれば、2年間で約6万人が増えています。年を追うごとに、介護離職者数の増加は確実です。

介護をしながらの責任ある立場での職に限界があり、職を失わざるを得ないことが、社会問題になります。

今の介護離職対策の政策が果たして、現実的なのかどうかをまとめました。

育児と介護の支援制度の比較

法律では育児・介護休業法があり、介護休業は全ての企業に義務づけられているというものの、育児と違い介護の場合は、全て同じように取り扱うことが難しく、育児休業と比較するとその支援制度は手薄くなっています。

  子育て 介護
休業 子供が1歳になるまで取得が可能 介護される人1人につき通算93日
休業中の所得補償 賃金月額の50% 賃金月額の40%
休業中の社会保険料 免除 免除なし
急病などの休暇制度 看護休暇=1人は年5日、2人以上は年10日 介護休暇=1人は年5日、2人以上は年10日
短時間勤務 子供が3歳になるまで1日6時間勤務が可能 義務なし

介護支援制度が手薄に感じる理由

このような制度の違いが生じるのは、下記のような事が理由です。

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  1. 介護がいつ始まり、いつ終わるのか見通しが立たない。
  2. 介護の必要な状況がさまざま (要介護度、認知症の有無とその進行状況、介護者と介護される側が、同居、別居、施設入所などの環境の違い)
  3. おめでたい育児と異なり、周囲に支援を求めにくい
  4. 介護を行う年齢層が既に企業内では、管理職などが多い

【これ以降の文は、2017年6月20日加筆修正】

介護がいつ始まり、いつ終わるのか見通しが立たない

厚生労働省がまとめた 『平均寿命と健康寿命を見る』によれば、平成22年度の時点で、平均寿命と健康寿命は、以下のとおりとなります。『平均寿命-健康寿命』の値は、男性で9.13年、女性で12.68年です。もし、介護のために仕事を辞めたとしたら、約13年間の生活費の貯蓄が必要な計算です。

  • 男性 平均寿命が79.55歳 健康寿命が70.42歳
  • 女性 平均寿命が73.62歳 健康寿命が86.30歳
介護の必要な状況がさまざま

介護が必要な理由の上位3位は、脳血管疾患(脳卒中)、認知症、高齢による衰弱です。そのなかでも、介護者の介護時間は、要介護4で53.9%、要介護5で56.1%が、ほとんど終日という回答を得ています。

しかも、40%近くの高齢者の意識は、自宅で介護を望んでいます。同様に50%を超える高齢者の意識も、自宅で生涯を終えることを望んでいます。この数値は、健康な高齢者も含んでいますが、自宅で介護を行う人は必要です。

おめでたい育児と異なり、周囲に支援を求めにくい

厚生労働省が、 「平成27年度雇用均等基本調査」の結果概要の資料の中(P19)に、介護休業の取得状況がまとめられています。

平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に、介護休業を取得した事業所の割合は、1.3%です。資料の中には、男女別の数値も書かれていますが、いずれにしてもわずか1.3%の事業所しか、介護休業制度が利用されていません。

現在、政府で『働き方改革』が進められていて、日本人全体の働く意識が変わることが、介護休業の取りやすさにもつながると期待しています。しかし、一方では過重労働による、過労死のニュースも良く目にするようになりました。意識改革は、ほど遠そうです。

 

介護を行う年齢層が既に企業内では、管理職などが多い

働きながら介護をする人の割合を、年齢別にみると以下の通りです。明らかに、管理職が多い50歳代がダントツとなっています。(総務省の就業構造基本調査で、平成24年度作成資料)

  • 40歳未満が約32万人
  • 40歳代が約53万人
  • 50歳代が約114万人
  • 60歳代が約76万人

しかし、ひとたび、被介護者の衰弱に伴って、要介護4とか要介護5になるようなことがあれば、管理職であるだけに介護休業が取りにくくなります。部下への示しがつかないなどと、考えて離職を選んでしまうのです。

介護者へに、現実的な支援策がなければ、介護離職者の増加は明らかです。

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