けいれん止めの治療が始まる

倒れた日は寝たきりを覚悟した

深夜の病院は静まり返り、ヒヤリとしています。看護師に案内された診察室には、女性の医師がCT画像を、映し出した壁の前に座っていました。

名刺とともに何枚かの薄い紙を渡されて、これから何が起こるのか息がつまりそうです。話の内容は、母のてんかんの発作が治まり、現在の母の病状と今後の治療方針についてです。

医師の言葉は、何度も練り重ねた文章のように正確で、素人の私にもわかりやすいものです。なるほど、ERの現場で生死を直視してきた医師だと、頭をかすめます。女医

医師はこう切り出します。長時間のけいれんは、脳に酸素が行っていないために脳細胞が破壊されて、今まで同様の生活は無理であること、現在けいれんは治まったものの、高齢であるために意識の回復に時間がかかるかもしれないこと、意識が回復しても障がいが残るかもしれないと話します。

『このまま意識が、戻らないこともあるのですか?』という私の問いに、『もしかしたら』と答えます。

入院に当たって、4枚の同意書に印鑑を求められ、病院というところは最悪の事態を予想して動くものだ(少々大げさなところだ)という意識はあったものの、さすがに、この時母の寝たきりを覚悟しました。この時、印鑑を持っていなかったので、サインですませます。

4枚の同意書には、そういう覚悟をせざるを得ないものがあったからです。後に姉が漏らした言葉からも、彼女も母は寝たきりになると考えていたことがわかります。

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その内訳は、下記のとおり。

  1. 入院診療計画書

    病名、症状、治療計画などが書かれています。

  2. 手術・検査・病状などの説明

    けいれんの原因と、治療方法が詳細に書かれています。

  3. 血液製剤の使用に関する説明と同意書

    輸血には多くの危険が伴うのですが、やむを得ない場合は、輸血療法に同意するというものです。

  4. じょくそうに関する説明と写真撮影の同意書

    床ずれがおきた時、治療に必要な写真撮影に対する同意書です。

また、口で述べただけでしたが、けいれん止めを鼻から入れる際、患者が点滴の管を抜かないように手袋(ミトン)をすることと、ベッドに拘束するということも同意を求められました。

ER担当の医師らしく、静かで穏やかな語り口ではありましたが、要点を残らず話され、後々この時の説明の意味を何度もかみしめます。母が、けいれん止めのチューブを嫌がり、何度も外したり看護師とトラブルを起こしたりしたためです。

こんな病状の説明を受けているうちに姉が部屋に入ってきて、この大変な状況にもう一人の協力者が、できたという安ど感が得られました。

説明後、救急救命室に入り、母の様子を見ることにします。江口洋介のテレビドラマ『救命病棟24時』と同じ、広い部屋にベッドが横に並べられている光景に、ERの現場はみんなこうなんだと納得します。どの患者の容体が急変してもすぐに対応できるように、横一列に並べられた様は、合理的ではあるけれど、事務的なものを感じます。

けいれんをおこしていない母にひと安心し、いったいいつ目が覚めるのだろう?と不安なまま姉と一緒に帰宅したのです。

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